犯罪事実を認定するには適法な証拠調を経た証拠によることを要するが、記録によれば、第一審第二回公判期日において所論証拠書類が適法に証拠調べを施行された旨の記載があるから、その適法な証拠調がなされたことは明らかである。該証拠書類が記録に編綴されているかどうかは、犯罪事実の認定を左右するものではない。所論は、証拠書類が記録に編綴されていなければ、これを調査することもできず、当事者に不可能を強いる結果になると主張するが、記録公判調書によれば、所論証拠書類は、第一審裁判所の別件により引用することが明示されており、従つてその所在も明確にされており、かつ該記録は、自由に閲覧することができるものであるから(刑訴四〇条、五三条)所論のごとく不能を強いるものということはできない。
適法な証拠調を経たことが認められる証拠書類が記録に編綴されていない場合と犯罪事実の認定
刑訴法310条,刑訴法335条,刑訴法317条,刑訴法52条,刑訴規則44条
判旨
公判期日における訴訟手続の適法性は公判調書によってのみ証明され、証拠書類が記録に編綴されていなくとも、別件引用により所在が明確で閲覧可能であれば証拠調べは有効である。
問題の所在(論点)
公判調書に証拠調べ施行の記載がある一方で、証拠書類が当該事件記録に編綴されず別件引用されている場合、刑事訴訟法52条との関係で適法な証拠調べがあったといえるか。
規範
犯罪事実の認定は適法な証拠調べを経た証拠によるべきであるが、公判期日における訴訟手続の実施およびその適法性は、公判調書の記載のみによって証明される(刑事訴訟法52条)。また、証拠書類が物理的に当該事件記録に編綴されていることは証拠調べの有効性の要件ではなく、当該書類の所在が明確であり、当事者が閲覧可能な状態にあれば、適法な証拠調べを行い得る。
重要事実
第一審の公判期日において、ある証拠書類について証拠調べが施行された旨が公判調書に記載されていた。しかし、当該証拠書類は当該事件の記録には直接綴じ込まれておらず、裁判所の別件記録に編綴されていた。弁護人は、記録に編綴されていない証拠を調査することは不可能であり、証拠調べ手続に違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件では、第一審の公判調書に当該証拠書類の証拠調べを施行した旨の記載がある以上、同法52条により手続の適法性は証明されている。また、当該書類は別件記録からの引用であることが明示されて所在が明確であり、かつ刑事訴訟法40条・53条に基づき自由に閲覧できる状態にあった。したがって、当事者に調査不能を強いるものではなく、物理的な編綴の有無は証拠調べの効力に影響しないと解される。
結論
証拠書類が記録に編綴されていなくとも、公判調書に証拠調べの記載があり、かつその所在が明確で閲覧可能であれば、適法な証拠調べがなされたものと認められる。
実務上の射程
刑事訴訟法52条の公判調書の絶対的証明力を確認する際に活用できる。特に、証拠調べ手続の瑕疵が主張された場面において、調書の記載を重視しつつ、実質的な防御権の行使(閲覧可能性)が担保されていれば手続が有効であることを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和27(れ)30 / 裁判年月日: 昭和29年4月28日 / 結論: 棄却
一 公判調書がすべて紛失して存在しない場合には、上告裁判所は自ら旧刑訴第四三五条によつて事実の取調をした上で、公判期日における訴訟手続が適法に行われたか否かを認定することができる。 二 公判調書紛失のため、公判調書以外の資料により公判期日における訴訟手続がすべて適法に行われたことが認められた場合には、その紛失した公判調…
事件番号: 昭和30(あ)3753 / 裁判年月日: 昭和31年6月14日 / 結論: 棄却
所論告発書の証拠調については第一審において所論のごとく弁護人が不同意を唱えた形跡が認められないばかりでなく、同告発書は、本件についての訴訟要件としての告発があつた事実を証明する資料であつて、本件事実認定の証拠として提出されたものでないこと記録上明白であるから、仮りに被告人、弁護人から不同意の申立があつたとしても、記録に…
事件番号: 昭和26(あ)1091 / 裁判年月日: 昭和28年2月19日 / 結論: 棄却
原審判決が、本件第一審判決の判文全体の記載から合理的に見て、同判決が所論告発書を挙示したのは、その判示第一事実の罪となるべき事実の直接認定資料に供したものではなく、公訴提訴の手続の有効性の認定のためであると判示したときは、かかる告発書を証拠とすることは違法である旨判示した判例(昭和二五年二月一五日福岡高裁判決)と相反す…
事件番号: 昭和27(あ)5116 / 裁判年月日: 昭和29年3月23日 / 結論: 棄却
共同被告人の検察官に対する供述調書は、当該被告人との関係においては、刑訴第三〇一条の「犯罪事実に関する他の証拠」にあたり、これを最初に取り調べても違法であるとはいえない。註。右共同被告人は一審で確定済。