原判決の是認する第一審判決が、適法に証拠調のされていない所論Aの各供述調書を犯罪事実認定の証拠としているとしても、かような違法は、本件のごとく、右証拠調を経ない証拠を除いてもその余の挙示の証拠により犯罪事実を認定できる場合においては判決破棄の理由とならないこと、当裁判所の累次の判例(昭和二四年(れ)第一九四六号、同二五年一月一九日第一小法廷判決、刑集四巻一号三〇頁、昭和二六年(あ)第四六七七号同二七年三月六日第一小法廷判決、刑集六巻三号三六三頁)とするところである。
適法な証拠調を経ない証拠を他の証拠と総合して犯罪事実を認定した違法と判決への影響
刑訴法317条,刑訴法335条1項
判旨
適法に証拠調べがなされていない証拠を判決の基礎とした違法があっても、当該証拠を除外した他の証拠のみで犯罪事実を認定できる場合には、判決を破棄すべき理由にはならない。
問題の所在(論点)
適法な証拠調べを経ていない証拠を判決の基礎とした場合、その余の適法な証拠によって犯罪事実が認定可能であっても、刑訴法上の判決破棄事由(結果に影響を及ぼすべき法令の違反)に該当するか。
規範
訴訟手続きに法令の違反がある場合であっても、当該違法が判決の結果に影響を及ぼさないことが明らかであれば、判決の破棄事由とはならない。具体的には、適法な証拠調べを経ていない証拠を事実認定に用いたという違法があっても、その余の挙示された証拠によって犯罪事実を十分に認定できる場合には、原判決を維持すべきである。
重要事実
第一審判決において、適法に証拠調べが行われていないAの各供述調書が犯罪事実認定の証拠として採用されていた。被告人側は、この証拠調べを経ていない証拠に基づき事実を認定した点は違法であり、判決を破棄すべきであると主張して上告した。しかし、記録上、Aの供述調書以外の適法な証拠も複数挙示されていた。
あてはめ
本件において、第一審判決がAの各供述調書を証拠とした点には手続き上の違法が認められる。しかし、判決文と記録を対照すると、当該調書を除外したとしても、他に挙示されている適法な証拠によって犯罪事実を認定することが可能である。したがって、証拠調べの不備という違法は、判決の結論(犯罪事実の認定)を左右するものではなく、実質的に判決の結果に影響を及ぼしたとはいえない。
結論
証拠調べを経ていない証拠を除いても犯罪事実を認定できる場合には、当該手続き違法は判決の破棄理由とはならず、上告は棄却される。
実務上の射程
刑訴法379条(控訴理由)や410条(上告理由)における「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」の判断において、証拠排除後の「証拠の十分性」を基準とする実務上の準則を示している。答案上は、証拠能力のない証拠が混入した場合の救済の可否を論じる際の「影響性」のあてはめで活用できる。
事件番号: 昭和36(あ)55 / 裁判年月日: 昭和36年12月27日 / 結論: 棄却
いわゆるすり替輸出の方法により甲物品に代えて乙物品を船積輸出する目的であるため、甲物品については当初からこれを真実船積輸出する意思がない場合でも、甲物品を保税上屋に搬入し税関から輸出の許可を得た以上、これを船積しないで保税上屋から引き取ることは、関税法第二条第一号にいう「輸入」にあたる。
事件番号: 昭和30(あ)2949 / 裁判年月日: 昭和31年9月13日 / 結論: 棄却
犯罪事実を認定するには適法な証拠調を経た証拠によることを要するが、記録によれば、第一審第二回公判期日において所論証拠書類が適法に証拠調べを施行された旨の記載があるから、その適法な証拠調がなされたことは明らかである。該証拠書類が記録に編綴されているかどうかは、犯罪事実の認定を左右するものではない。所論は、証拠書類が記録に…