判旨
逮捕・勾留手続の違法を理由とする公訴提起や判決の効力の争いについて、逮捕・勾留の違法自体は上告理由とならず、別途の手続で救済を求めるべきである。ただし、逮捕状と勾留状で犯行日時が異なる場合であっても、犯人、場所、方法、被害者が同一であり、事実の同一性が認められる限り、当該逮捕・勾留は適法である。
問題の所在(論点)
逮捕状と勾留状の間で被疑事実の日時に重大な齟齬がある場合、勾留状は「逮捕状の基礎となった事実」と同一性を欠き、違法な手続となるか。また、逮捕・勾留の違法を公訴提起や判決の効力を争う上告理由とできるか。
規範
逮捕・勾留手続の違法自体は、上告理由として主張することはできず、別途の手続による救済を求めるべきである。また、勾留状に記載された被疑事実が逮捕状のそれと細部(日時等)において相違していても、両事実の犯人、犯行場所、方法、および被害者が同一であり、客観的な事実の同一性が認められる場合には、逮捕状と同一の事実に係る勾留として適法である。
重要事実
被告人に対し、昭和24年8月15日を犯行日時とする逮捕状が発付された。逮捕後の捜査により、被告人の供述やその他の証拠から、真実の犯行日時は昭和23年8月14日であることが判明した。そのため、勾留状の被疑事実には正しい日時である昭和23年8月14日が記載された。被告人側は、逮捕状と勾留状で日時の相違が甚だしく、勾留状は逮捕状と異なる事実に基づき発付された違法なものであるとして、公訴提起等の無効を主張した。
あてはめ
本件では、逮捕状と勾留状で犯行日時に約1年の開きがあるが、これは犯行から6年経過した後の捜査開始により、当初の疎明が不十分であったことに起因する。しかし、逮捕後の供述等により日時が修正されたに過ぎず、犯人、犯行の場所、方法、および被害者は全く同一である。したがって、両事実は同一性を有しており、逮捕状と異なる事実に基づく勾留とはいえない。また、前提として逮捕・勾留の違法を上告理由とすることは判例上認められない。
結論
本件逮捕・勾留手続に違法はなく、また逮捕・勾留の違法を上告理由とすることはできないため、上告を棄却する。
実務上の射程
逮捕と勾留の事実の同一性については、日時等の細部に拘泥せず、犯人・被害者・態様等の核心的部分から「事件の単一性」を判断する。実務上は、令状段階の瑕疵が公訴提起の有効性に影響を与えるのは、それが重大な違法であり、かつ公判手続に直接影響を及ぼす場合に限られるとの視点を示唆している。
事件番号: 昭和24(れ)736 / 裁判年月日: 昭和24年7月16日 / 結論: 棄却
一 書類の供述者又は作成者を公判で訊問した場合に、その訊問の結果による供述の證據に採用するか又は書類の記載を證據にとるかは、裁判所の自由心證に任せられている。 二 犯罪の日時に多少の差異があつても公訴事實の同一性を失うものではない。 三 本件勾留状に理由となつている犯罪を明示していないことは所論のとおりである。しかし勾…