司法警察官の作成した検証調書の日附が検証当日に遡らせてあつたとしても、その検証調書の証拠能力には影響がない
検証調書の日附の相異とその証拠能力
刑訴法317条,刑訴法218条1項,刑訴規則58条
判旨
検証調書の作成日付が検証当日に遡って記載されていたとしても、証拠として同意され異議なく提出されている以上、直ちに証拠能力や証明力が否定されるものではない。また、控訴趣意書の提出までに十分な期間が確保され、現に弁論が行われていれば、弁護権の不法な制限には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 実態と異なる作成日付が記載された検証調書の証拠能力及び証明力の有無。2. 控訴審における弁護人選任から趣意書提出までの期間の妥当性と弁護権制限の成否(刑訴法規則等に関連する手続的適法性)。
規範
1. 検証調書の作成日付が事実と異なり検証当日に遡らせて記載されていたとしても、当事者が証拠とすることに同意し、作成日付について異議を申し立てていない場合には、特段の事情がない限り、その証拠能力及び証明力は失われない。2. 控訴審における弁護人の選任時期に関し、控訴趣意書の提出期限までに相当な準備期間が与えられ、かつ現に弁護人が趣意書を提出して有効な弁論を行っている場合には、弁護権の不法な制限とは評価されない。
重要事実
被告人が控訴審判決を不服として上告した事案。弁護人は、(1)第一審で提出された検証調書の日付が検証当日に遡って作成されており不当であること、(2)原審における弁護人の選任時期が遅く弁護権が制限されたことを主張した。記録上、当該検証調書は第一審で証拠とすることに同意されており、日付についても異議の申立てはなかった。また、控訴審では趣意書提出期限まで少なくとも21日の期間があり、弁護人は期限内に趣意書を提出し、異議なく弁論を行っていた。
あてはめ
1. 本件検証調書は、第一審において被告人側が証拠とすることに同意しており、作成日付についても何ら異議が述べられていない。日付が遡及して記載された点に不相当な面があるとしても、同意がある以上、証拠能力に影響はなく、本件の具体的事況下では証明力も左右されない。2. 控訴審の弁護人選任後、趣意書提出まで21日間という準備期間が確保されていた。弁護人は実際に期限内に趣意書を提出して有効に弁論を遂行しており、手続上の不利益は認められないため、弁護権の不法な制限には当たらない。
結論
検証調書の証拠能力及び証明力に欠けるところはなく、また原審の弁護人選任時期についても弁護権を制限するような違法はないため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
検証調書の形式的な不備(作成日付の遡及記載)があっても、証拠同意がある場合の証拠能力への影響は限定的であることを示す。また、弁護権の制限については、実質的な準備期間の有無と実際の防御活動の成否が判断基準となる。刑事訴訟における手続違法の重大性を判断する際の参考となる。
事件番号: 昭和30(あ)2398 / 裁判年月日: 昭和32年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逮捕・勾留手続の違法を理由とする公訴提起や判決の効力の争いについて、逮捕・勾留の違法自体は上告理由とならず、別途の手続で救済を求めるべきである。ただし、逮捕状と勾留状で犯行日時が異なる場合であっても、犯人、場所、方法、被害者が同一であり、事実の同一性が認められる限り、当該逮捕・勾留は適法である。 …