一 書類の供述者又は作成者を公判で訊問した場合に、その訊問の結果による供述の證據に採用するか又は書類の記載を證據にとるかは、裁判所の自由心證に任せられている。 二 犯罪の日時に多少の差異があつても公訴事實の同一性を失うものではない。 三 本件勾留状に理由となつている犯罪を明示していないことは所論のとおりである。しかし勾留状の方式について違法があれば抗告その他法律の定める手續によつてこれが是正を求むべきであつてこれをもつて原判決を攻撃する理由とすることのできないことは既に當裁判所の判例(昭和二三年(れ)第五八二號、同年一一月一〇日大法廷判決參照)とするところである。
一 書類の供述者を公判で訊問しながら該訊問の結果を證據に採らないで書類の記載を證據に採ることの適否 二 犯罪の日時の差異と公訴事實の同一性 三 勾留状の方式の違法と上告理由
刑訴應急措置法12條1項,舊刑訴法291條,舊刑訴法360條1項,舊刑訴法411條,舊刑訴法470條4號
判旨
犯行日時の多少の差異は公訴事実の同一性を失わせず、また勾留状の方式に違法があっても直ちに自白の強制は認められない。不当な長期拘禁後の自白に該当するかは、拘禁と自白との間の因果関係の有無によって判断される。
問題の所在(論点)
1. 犯行日時の訂正変更が公訴事実の同一性を逸脱するか。 2. 勾留状の方式違法が自白の任意性に影響するか。 3. 被告人の自白が「不当に長く拘禁された後の自白」(憲法38条2項)として証拠能力を否定されるか。
規範
1. 犯罪の日時に多少の差異があっても、公訴事実の同一性は失われない。 2. 勾留状の方式に違法があることは、当然に自白の任意性を否定する事情(強制)にはならない。 3. 憲法38条2項にいう「不当に長く拘禁された後の自白」に当たるかは、身柄拘束と自白との間に因果関係があるか否かにより決せられる。
重要事実
被告人は強盗罪で起訴されたが、公判中に検察官が犯行日時を「昭和22年3月15日頃」から「同年2月15日頃」へ訂正変更した。また、本件勾留状には犯罪事実が明示されていない方式上の不備があった。被告人は、勾留執行(7月10日)から数日後の警察官・検察官の取調べ、さらに第一審および原審公判を通じて一貫して自白を行っていた。
あてはめ
1. 犯行日時の1ヶ月程度の差異は、事実の基礎を共通にするものであり、公訴事実の同一性の範囲内である。 2. 勾留状に犯罪の明示がない違法は、抗告等で是正すべき手続上の問題にとどまり、これのみで直ちに自白が強制によるものとは断定できない。 3. 被告人は勾留直後から一貫して自白しており、原審における自白も従前の内容を繰り返したものにすぎない。したがって、身柄拘束の継続と自白との間に因果関係は認められず、「不当な長期拘禁後の自白」には該当しない。
結論
本件犯行日時の変更は適法であり、また本件自白は憲法38条2項に反せず証拠能力が認められるため、上告を棄却する。
実務上の射程
公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項)の判断において、日時の多少のズレは許容されることを示す。また、自白の証拠能力に関し、不当な長期拘禁の該当性を因果関係の有無で決する実務上の枠組みを提示しており、自白の任意性争点において引用すべき判例である。
事件番号: 昭和23(れ)497 / 裁判年月日: 昭和23年9月18日 / 結論: 棄却
一 かりに原判決が證據とした原審公判における被告人の自白前の拘禁が不當に長いものであるとしても、被告人は本件犯行については、拘禁後四〇餘日を經た豫審の取調べにおいて、すでに自白をしているのであり、更にその後七〇餘日を經た第一審公判においても同樣自白をしているのであつて、この程度の期間の拘禁は、前述の事情等からみて不當に…
事件番号: 昭和24(れ)349 / 裁判年月日: 昭和28年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条2項にいう「不当に長く拘禁された後の自白」とは、拘禁と自白との間に因果関係があることを要し、因果関係がないことが明らかな自白は含まれない。また、病状があっても審理に耐え得ると認められる限り、公判手続を停止しないことは適法である。 第1 事案の概要:被告人は強盗容疑で逮捕・勾留され、約11…