窃盜被害届書に記載された被害日時が自白の日時と異つていても、被害の場所、被害者、被害物件等窃盜の具体的な客観事実の記載が自白と一致している場合には、右届書を補強証拠とすることができる。
自白の異なる被害日時を記載した被害届書と補強証拠
憲法38案3項,刑訴応急措置法10条3項
判旨
自白の内容と補強証拠の内容に日時等の細部で不一致があっても、犯罪の客観的事実を示す主要な部分が一致していれば補強証拠としての適格を認めることができる。
問題の所在(論点)
自白と補強証拠(被害届)の間で、犯行日時に4日の食い違いがある場合、当該被害届は自白の補強証拠となり得るか。
規範
補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項)は、自白にかかる犯罪事実の客観的部分について、自白が架空のものでないことを担保し得るものであれば足りる。証拠間に日時の相違等の細部における抵触があるとしても、実質的な証拠価値の判断は裁判所の自由な心証に委ねられる。
重要事実
被告人はA方での窃盗事実を自白し、原審はこれを昭和23年7月14日午前1時半頃の犯行と認定した。一方で、被害者Aが作成した盗難被害届には、同年7月18日午前3時頃と記載されており、日時に4日の開きがあった。しかし、被害の場所、被害者、被害物件等の客観的事実は自白と被害届の内容で一致していた。
あてはめ
本件における被害届は、犯行日時において自白と4日の開きがあるものの、被害場所、被害者、被害物件といった窃盗罪の本質に関わる具体的な客観的事実において自白と一致している。このような場合、被害届は自白の真実性を裏付けるに足りる客観的事実を証明するものといえ、証拠間に一部抵触があってもその一を捨てて他を採ることは裁判所の合理的な証拠評価の範囲内である。
結論
被害届は自白の補強証拠として適格であり、原判決が自白と被害届に基づいて有罪を認定したことに違法はない。
実務上の射程
自白の補強法則における「実質的一致」の程度を示した事例である。実務上、自白と客観的証拠の細部に多少の矛盾があっても、犯罪の主要部分で合致していれば補強証拠として活用できることを示す。自由心証主義との関係で証拠の取捨選択が広く認められる根拠として援用可能である。
事件番号: 昭和27(あ)5540 / 裁判年月日: 昭和29年7月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白と被害届等の客観的証拠の間で、犯罪の日時、被害者、被害物件が一致していれば、犯行場所の細部が異なっていたとしても、当該被害届は自白の真実性を担保する補強証拠となり得る。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪で起訴され、公判において「d寮のA方」で靴等を窃取したと自供した。これに対し、証拠として提出…
事件番号: 昭和24(れ)1288 / 裁判年月日: 昭和24年9月24日 / 結論: 棄却
盜難被害届中被害物件の數量の記載に、判示被害物件の數量と所論のような僅少の差異がありとしても、右盜難届の記載が判示犯罪事實に照應するものと認定する妨げとなるものではない。