所論のとおり、弁護人牟田真に対する控訴趣意書提出最終日指定通知の効力が認められず、従つて弁護人田原昇に対し右通知がなされていない違法があるとしても、本件記録によれば、被告人両名に対しては右通知が適法になされており、その弁護人田原昇において、右指定の提出期日最終日に控訴趣意書を提出しておるのみならず、原審第一回公判期日に出廷の上右の点については何らの異議を述べることもなく、自己の外牟田弁護人提出の各控訴趣意書に基づき陳述した事実が認められるから、所論通知のなされなかつた違法は治ゆされたものと解するを相当とする。
弁護人に対する控訴趣意書提出最終日指定通知のなされなかつた違法とその治ゆ
刑訴法376条,刑訴法389条,刑訴規則236条
判旨
弁護人に対し控訴趣意書提出最終日の指定通知がなされなかった違法がある場合でも、被告人への通知が適法であり、弁護人が期日内に趣意書を提出し、公判で異議なく陳述したときは、当該違法は治癒される。
問題の所在(論点)
弁護人に対する控訴趣意書提出最終日の指定通知(刑訴法376条1項、刑訴規則235条等参照)がなされなかった場合に、憲法37条3項の弁護権侵害として控訴審判決を破棄すべき事由となるか。
規範
訴訟手続に法令違反が存在する場合であっても、当該手続の目的が実質的に達成され、当事者の防御権に実質的な不利益が生じていないと認められる特段の事情があるときは、その違法は治癒されると解する。
重要事実
控訴審において、国選弁護人への選任命令と控訴趣意書提出最終日指定通知が同時に送達された(効力に疑問がある)ほか、別の弁護人に対しては指定通知自体がなされなかった。しかし、被告人両名に対しては適法に通知がなされており、通知を受けなかった弁護人も指定期日内に控訴趣意書を提出していた。さらに、第一回公判期日に出廷した弁護人は、通知の不備について異議を述べることなく、提出済みの控訴趣意書に基づき陳述を行った。
あてはめ
本件では、被告人本人に対して適法な通知がなされており、弁護人も指定期限を認識して期限内に控訴趣意書を提出している。また、弁護人は公判で何ら異議を唱えず、自ら提出した趣意書等に基づき弁論を行っている。これらの事実に照らせば、通知を欠いたことによる防御権の侵害という実質的な不利益は存在せず、手続上の違法は治癒されたといえる。
結論
弁護人に対する指定通知を欠いた違法は治癒されており、憲法37条3項違反等の上告理由は認められない。
実務上の射程
手続的瑕疵の治癒という理論構成において、被告人の実質的な防御権保護の観点から判断を示す事例である。答案上は、通知等の形式的要件に欠陥がある場合でも、被告人側がその目的を達成し、かつ異議なく手続が進んだ事実を拾って違法性を否定する際の論拠として有用である。
事件番号: 昭和25(あ)403 / 裁判年月日: 昭和25年12月26日 / 結論: 棄却
記録に徴すると控訴裁判所においては、第一回公判期日を昭和二四年一一月二六日午前一〇時と定め、同月一〇日これを警察官、弁護人、被告人に通知したことが認められる論旨の指摘するとおり国選弁護人大畑正盛に対しては、郵便送達報告書が編綴してないがかかる通知は特段の規定がない限り必ずしも送達の方法によることを要せず、適宜の方法でこ…