記録に徴すると控訴裁判所においては、第一回公判期日を昭和二四年一一月二六日午前一〇時と定め、同月一〇日これを警察官、弁護人、被告人に通知したことが認められる論旨の指摘するとおり国選弁護人大畑正盛に対しては、郵便送達報告書が編綴してないがかかる通知は特段の規定がない限り必ずしも送達の方法によることを要せず、適宜の方法でこれを行つて、これを記録上明らかにしておけば足りるものである(刑訴規則第二九八条第三項参照)。従つて本件公判期日の通知も弁護人にした旨明らかにしてある以上右大畑弁護人に対してかかる通知がなかつたものとも断じ難い。
弁護人に対する公判期日通知の方法
刑訴法273条,刑訴規則298条3項
判旨
控訴審における公判期日の通知は、特段の規定がない限り送達の方法による必要はなく、記録上通知の事実が明らかであれば足りる。また、複数の弁護人が同様の控訴趣意を提出している場合、一方への通知に不備があっても、実質的に判断がなされていれば違憲とはならない。
問題の所在(論点)
控訴審の公判期日通知において、送達報告書等の公証資料を欠く場合に通知の効力が認められるか。また、一部の弁護人に対する通知に不備がある場合、それが直ちに憲法違反の事由となるか。
規範
公判期日の通知は、特段の規定がない限り、必ずしも送達の方法によることを要しない。適宜の方法でこれを行い、その事実を記録上明らかにしておけば足りる(刑事訴訟規則298条3項参照)。また、特定の弁護人に対する手続的瑕疵が主張される場合であっても、他の弁護人が提出した控訴趣意書の内容に当該弁護人の主張が包含されており、原判決がそれらについて実質的に判断しているといえるならば、憲法違反の問題は生じない。
重要事実
控訴審において、第一回公判期日が定められ、検察官、被告人、および私選弁護人に対して通知がなされた。国選弁護人についても、記録上は通知した旨の記載があるものの、郵便送達報告書が編綴されていなかった。被告人側は、国選弁護人に対する適法な通知が欠けているとして、憲法違反を主張して上告した。なお、私選弁護人と国選弁護人は共に量刑不当を理由とする控訴趣意書を提出しており、その内容は重複していた。
あてはめ
本件では、記録上弁護人に対して公判期日の通知がなされた旨が明らかになっており、送達報告書の不在をもって直ちに通知がなかったと断ずることはできない。さらに、私選弁護人と国選弁護人の双方が量刑不当の控訴趣旨を提出しており、後者の主張は全て前者の趣意書に包含されていた。原判決はこれらの主張について実質的に判断を下しているため、手続上の不利益は生じていないと解される。
結論
公判期日の通知に瑕疵はなく、また実質的な審理が尽くされている以上、憲法違反には当たらない。したがって、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
訴訟手続の適正(憲法31条)に関する判例であり、通知の方法の不備が直ちに違憲・違法となるわけではなく、実質的な防御権の行使が保障されていたかという観点から判断する枠組みを示している。答案上は、手続的瑕疵が審理の有効性に及ぼす影響を論じる際の補強材料として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)1532 / 裁判年月日: 昭和32年6月25日 / 結論: 棄却
所論のとおり、弁護人牟田真に対する控訴趣意書提出最終日指定通知の効力が認められず、従つて弁護人田原昇に対し右通知がなされていない違法があるとしても、本件記録によれば、被告人両名に対しては右通知が適法になされており、その弁護人田原昇において、右指定の提出期日最終日に控訴趣意書を提出しておるのみならず、原審第一回公判期日に…
事件番号: 昭和28(あ)3696 / 裁判年月日: 昭和28年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が通知に基づき弁護人を選任し、当該弁護人が期間内に控訴趣意書を提出している場合には、通知等に関する手続上の不備があったとしても、判決に影響を及ぼさないことが明白な単なる訴訟手続違背にとどまり、上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人両名が所定の通知に基づき弁護人を選任し、その弁護人…