控訴審の公判期日に被告人を召喚する手続がとられていなくても、その期日が被告人に通知されておれば、その控訴審の手続も違法ではない。
控訴審の公判期日に被告人を召喚することの要否
刑訴法404條,刑訴法273條2項,刑訴法390條
判旨
控訴審において被告人に召喚状を送達せず公判期日の通知のみを行った手続は、実質的に出頭の機会が与えられている限り違法ではない。被告人の出頭が原則として不要な控訴審では、召喚は出頭機会の付与という実質的意味に限定されるためである。
問題の所在(論点)
被告人の出頭を要しない控訴審(刑訴法390条本文)において、被告人に対し「召喚」の手続を経ず「期日の通知」のみを行ったことは、刑訴法上の適法な手続として許容されるか。
規範
控訴審は、被告人が原則として公判期日に出頭することを要せず(刑訴法390条)、弁護人によらなければ自己に有利な弁論ができない(同388条)構造を持つ。したがって、刑訴法390条但書の場合を除き、控訴審における被告人の召喚は、形式的には召喚であっても、実質的には公判期日を通知して自ら欲すれば出頭できる機会を与えるという意味を有する。よって、召喚の手続がとられていなくとも、期日の通知がなされ出頭の機会が確保されていれば、訴訟手続に違法はない。
重要事実
被告人が食糧管理法違反で起訴された事件の控訴審において、原審は第1回および第2回公判期日に際し、被告人を召喚する手続をとらなかった。しかし、裁判所の記録によれば、被告人に対して当該各期日の通知自体は事前に行われていた。被告人側は、召喚状の送達がないまま審理を進めたことは、適正な手続を定める憲法31条および公平な裁判を受ける権利を定める憲法37条1項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件では、原審において被告人を召喚した形跡は認められないが、記録上、被告人に対して期日の通知がなされた事実は明らかである。控訴審の性質に鑑みれば、召喚の実質的機能は出頭機会の付与にある。本件被告人は通知を通じて自ら出頭する機会を与えられていたといえるから、召喚という形式を欠いていても実質的な不利益はなく、手続に違法があるとは断言できない。したがって、前提となる違憲の主張も失当である。
結論
控訴審における被告人への期日通知は、出頭の機会を与えるものとして十分であり、召喚手続の欠如のみをもって手続違法とはいえない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
被告人の出頭が義務付けられない控訴審特有の判断である。一審や、控訴審でも被告人の出頭が義務付けられる刑訴法390条但書(死刑、無期等の重罪事件)の場合には、厳格な召喚手続が求められる点に注意が必要である。答案上は、控訴審の構造と適正手続の保障(実質的機会の付与)を論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和30(あ)2702 / 裁判年月日: 昭和32年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において、被告人が公判期日に出頭し弁論を経た後、判決宣告期日の通知が直前であっても、被告人及び弁護人の欠席した状態で判決を言い渡すことは違法ではない。 第1 事案の概要:控訴審の第1回公判に被告人と弁護人が出頭し、控訴趣意陳述、答弁、供述、証拠決定が行われた。第2回公判には被告人が欠席したが…