第一審の確定した事実によれば、公の入札において指名競争入札者たる被告人等が入札の施行に先立つて落札者を予め協定することとし俗に「出し競」と称する方法で談合金の額を競り合い最高額(四八万三〇〇〇円落札予定額の二割に近い)の支払を申出たA建設に落札させることになり、その入札金額、再入札金額を協定し、他の入札者はすべて右金額より高額で入札することを決定したというのであるから、当裁判所屡次の判例に照らし「不正の利益」を得る目的があるということができる。
「不正ノ利益ヲ得ル目的ヲ以テ談合シ」た場合にあたる一事例
刑法96条ノ32項
判旨
指名競争入札において、入札前にあらかじめ落札者を協定し、談合金を競り合って落札予定者を決定する行為(出し競)は、刑法96条の3第2項の「不正の利益を得る目的」による談合にあたる。
問題の所在(論点)
落札者をあらかじめ協定し、かつ談合金を競り合って決定する「出し競」の行為が、刑法上の「不正の利益を得る目的」による談合に該当するか。また、このような行為に正当防衛や緊急避難の成立余地があるか。
規範
刑法96条の3第2項(公契約関係競売等妨害罪。当時の条文は旧刑法等)にいう「不正の利益を得る目的を以て談合」するとは、公正な価格の維持や適正な競争を害する意図をもって、入札参加者間で落札者や価格をあらかじめ合意することを指す。
重要事実
公の入札における指名競争入札者である被告人らは、入札の施行に先立ち、あらかじめ落札者を協定することとした。その際、いわゆる「出し競」と称する方法を用い、談合金の額を競り合った。その結果、最高額(48万3000円。落札予定額の約2割に相当)を提示した者を落札予定者として決定し、入札に臨んだ。
あてはめ
被告人らは、競争入札の本旨である価格競争を潜脱し、あらかじめ特定の者を落札者として選定している。さらに「出し競」によって多額の談合金(落札予定額の2割)を授受する合意をしていることから、その目的が適正な競争を害し、特定の者に不当な利得を得させるものであることは明らかである。したがって、「不正の利益を得る目的」があったと認められる。また、このような談合行為について、違法性を阻却すべき「急迫」な事情や「やむを得ない」事情は認められず、正当防衛や緊急避難の要件を欠く。
結論
被告人らの所為は、不正の利益を得る目的をもってした談合にあたり、刑法96条の3第2項(公契約関係競売等妨害罪)が成立する。
実務上の射程
本判決は、談合罪における「不正の利益」の意義を明確にし、いわゆる「出し競」の手法が典型的な処罰対象であることを示したものである。答案上は、入札の公正を害する目的の有無を判断する際の有力な判断材料となる。また、業界の慣習や経営維持を理由とする正当防衛・緊急避難の主張は、急迫性の欠如を理由に極めて厳格に排除される点に注意が必要である。
事件番号: 昭和29(あ)2502 / 裁判年月日: 昭和31年4月24日 / 結論: 棄却
被告人が、自由競争によれば百六十五万円位で入札する予定であつたものを、談合の上、被告人の会社の入札金額を百九十二万八千円と記載し、他の入札金額をこれよりも高額に記入させて入札せしめた場合には刑法第九六条ノ三にいう公正なる価格を害する目的で談合したものである。