所論「轢過」と「接触」との相違のごときは、公訴事実の同一性は勿論、訴因の同一性をも害するものとはいえないから、所論の訴訟法違反も認められない。
起訴状に自動車による「轢過」とあるを「接触」と認定することと訴因変更手続の要否
刑訴法312条
判旨
公訴事実における「轢過」と「接触」の相違は、公訴事実の同一性のみならず、訴因の同一性をも害するものではない。
問題の所在(論点)
交通事故の態様について、訴因上の「轢過」と認定された「接触」との相違が、訴因の同一性を害し、訴因変更の手続きを要するほどの重大な変更にあたるか(刑事訴訟法312条1項、256条3項)。
規範
訴因変更の要否、あるいは訴因の同一性の判断においては、審判対象の特定に必要な事実の同一性が維持されているかが基準となる。具体的には、行為の態様が多少異なったとしても、基本的事実関係において共通性があれば、訴因の同一性は失われない。
重要事実
被告人が運転する車両と被害者との関係について、公訴事実または原判決において「轢過(ひき殺すこと、または車輪で踏み越えること)」と表現されていた事象と、「接触(触れること)」という態様との間に相違があるとして、訴訟法違反が主張された事案である。
あてはめ
本件における「轢過」と「接触」という表現の相違は、車両が被害者に衝突したという基本的事実関係の枠内における態様の細部に関する差異にすぎない。このような態様の差異は、公訴事実の同一性を揺るがすものではなく、また訴因としての特定の範囲を逸脱するものでもない。したがって、防御に実質的な不利益を与えるような重大な変更とはいえず、訴因の同一性を害するものとは認められない。
結論
「轢過」と「接触」の相違は訴因の同一性を害さず、訴因変更手続を経ずとも有効に認定可能である。本件の上告は棄却される。
実務上の射程
交通事故における衝突態様の細部の相違(轢過か接触か、あるいは接触部位の軽微な違い等)が、直ちに訴因変更を要するものではないことを示す。もっとも、これによって被告人の防御に実質的な不利益が生じる場合には別途検討を要するが、基本的事実の範囲内であれば同一性が維持されるという実務上の基本的な判断枠組みを支える判例である。
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