判旨
判決書に記載された前科の罪名の誤記が、判決の結論に影響を及ぼさない軽微なものである場合には、刑訴法411条等の破棄事由としての事実誤認には当たらない。
問題の所在(論点)
判決書における前科の罪名の誤記が、刑訴法上の「判決に影響を及ぼすべき事実の誤認」に該当し、原判決の破棄理由となるか。
規範
判決における事実の誤認が原判決を破棄すべき理由となるためには、その誤りが「判決に影響を及ぼすべき」ものであることを要する。形式的な罪名の記載誤りであっても、累犯関係の成否などの実質的判断に影響しない軽微な過誤であれば、破棄事由には当たらない。
重要事実
被告人には前科があり、本件犯行と累犯の関係にあった。原判決は、この前科の罪名を「道路交通法違反」とすべきところ、誤って「道路交通取締法違反」と判示していた。弁護人は、この事実誤認等を理由に上告を申し立てた。
あてはめ
本件における前科の罪名の誤記(道路交通取締法違反と道路交通法違反の取り違え)は、記録に照らせば明らかな誤記である。しかし、この誤りは前科の存在自体や累犯適用の成否といった量刑の基礎となる実質的な判断を左右するものではない。したがって、当該誤認は判決の結論に影響を及ぼすべき重要な事実の誤認とはいえない。
結論
原判決に判決に影響を及ぼすべき事実の誤認はないため、上告は棄却される。
実務上の射程
判決書の記載に明白な誤りがある場合でも、それが結論に影響しない単純な書き損じや名称の誤用であれば、上訴審での破棄理由とはならない。実務上、判決の更正(刑訴法43条、44条等)の対象となり得る事由と、破棄事由となる実質的な事実誤認を区別する指針となる。
事件番号: 昭和29(あ)4059 / 裁判年月日: 昭和32年1月24日 / 結論: 棄却
所論「轢過」と「接触」との相違のごときは、公訴事実の同一性は勿論、訴因の同一性をも害するものとはいえないから、所論の訴訟法違反も認められない。
事件番号: 昭和49(あ)537 / 裁判年月日: 昭和49年6月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の有罪が確定していない余罪を、量刑の資料として考慮すること自体は許されるが、これを実質的に処罰する趣旨で考慮することは、刑事訴訟の原則に反し許されない。 第1 事案の概要:被告人が起訴された事実について有罪判決を受けた際、判決文中に起訴されていない他の事実についての言及があった。弁護人は、こ…
事件番号: 昭和53(あ)22 / 裁判年月日: 昭和53年6月16日 / 結論: 棄却
判決書自体又は記録に照らし、判決書の記載が単なる表現上の誤りであることが明らかでなく、判決裁判所の意図した記載も一義的に明確でないときは、これを明白な誤記と認めることは許されない。