判決書自体又は記録に照らし、判決書の記載が単なる表現上の誤りであることが明らかでなく、判決裁判所の意図した記載も一義的に明確でないときは、これを明白な誤記と認めることは許されない。
判決書の記載を明白な誤記と認めることが許されない場合
刑訴法335条1項,民訴法194条1項
判旨
判決書に明白な誤記があるというためには、記載が単なる表現上の誤りであることが明らかであり、かつ判決裁判所の意図した記載が一義的に明確であることを要する。
問題の所在(論点)
判決書に記載された事実認定上の不備を「明白な誤記」として処理できる要件、およびその不備が「判決に影響を及ぼすべきもの」といえるかが問題となった。
規範
判決書における「明白な誤記」の認定には、判決書自体または記録に照らし、①当該記載が単なる表現上の誤りであることが明らかであること、および②判決裁判所の意図した記載が一義的に明確であることを要する。事実認定の誤りに由来する可能性がある場合には、明白な誤記とは認められない。
重要事実
被告人は無免許運転の罪で起訴された。第一審判決は、罪となるべき事実として起訴状添付の犯罪事実一覧表を引用したが、回数番号29と30の運転区間の記載が入れ替わっていた。控訴審(原判決)は、これを「明白な誤記」であるとして第一審判決を維持した。しかし、記録上は当該記載が事実認定の誤りに由来する可能性も否定できない状況であった。
事件番号: 昭和55(あ)1858 / 裁判年月日: 昭和56年4月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】作成権限のない者が他人の名義を冒用して文書を作成する行為は、たとえその内容が真実であっても、文書の成立の真正を偽るものとして有印私文書偽造罪(刑法159条1項)が成立する。 第1 事案の概要:本件において、被告人は、正当な作成権限を有していないにもかかわらず、他人の氏名(有印)を用いて私文書を作成…
あてはめ
本件の両欄の記載は、第一審裁判所の事実認定の誤りに由来するとも解されるため、表現上の誤りであることが明らかではなく、裁判所の意図が一義的に明確ともいえない。したがって、原判決がこれを明白な誤記と認めたのは誤りであり、事実誤認の疑いがある。もっとも、いずれの運転区間であっても被告人が一部共通の道路において無免許運転をした事実に変わりはなく、罪の成立に影響しない。ゆえに、この事実は「判決に影響を及ぼすべき事実誤認」とはいえない。
結論
原判決の誤記認定は不当であるが、結論として判決に影響を及ぼすべき違法とはいえないため、上告を棄却する。
実務上の射程
更正決定の対象となる「誤記」の限界を示す規範として重要である。実務上、事実認定の本質に関わる部分は「誤記」で済ませず、事実誤認の有無を検討すべきだが、その誤認が結論(有罪・無罪や罪数等)を左右しない程度であれば、判決破棄事由にはならないことを示唆している。
事件番号: 昭和54(あ)1613 / 裁判年月日: 昭和56年4月8日 / 結論: 棄却
交通反則切符中の供述書を他人の名義で作成した場合は、あらかじめその他人の承諾を得ていたとしても、私文書偽造罪が成立する。
事件番号: 昭和43(あ)1651 / 裁判年月日: 昭和44年6月18日 / 結論: 破棄差戻
一 牽連犯を構成する手段となる犯罪と結果となる犯罪との中間に別罪の確定裁判が介在する場合においても、なお刑法五四条の適用がある。 二 自動車を運転する際に偽造にかかる運転免許証を携帯しているに止まる場合には、偽造公文書行使罪を構成しない。
事件番号: 昭和39(あ)273 / 裁判年月日: 昭和39年6月11日 / 結論: 棄却
一 第一審判決判示第一前段の被告人の所為が有印公文書偽造罪にあたるとした原判決の判断は正当である。 二 (第一審判決判示第一前段の要旨)被告人は昭和三四年一二月八日付神奈川県公安委員会がAに発行した小型自動四倫運輪免許一通をほしいままに、同免許証の氏名欄の「A」、生年月日欄の「大正15・11・19」、本籍欄の「栃木県真…