有罪判決において旧麻薬取締法(昭和二三年法律第一二三号)を適用する場合に、新麻薬取締法(昭和二八年法律第一四号)附則第一六項を判示しないでも違法ではない。
旧麻薬取締法(昭和二三年法律第一二三号)の適用と新麻薬取締法(昭和二八年法律第一四号)附則第一六項判示の要否
麻薬取締法(昭和28年法律14号)附則16項,刑訴法335条1項
判旨
法律が改正された場合に改正前の罰則を適用する旨を定めた附則は総則的規定に過ぎないため、判決において旧法の罰則規定を掲げれば足り、当該附則を明示しなくても違法ではない。
問題の所在(論点)
旧法が廃止され新法が施行された場合において、旧法の罰則を適用する根拠となる新法附則の規定を、判決書に摘示する必要があるか(法令適用の摘示における附則の要否)。
規範
新法の施行に伴い旧法が廃止された際、新法附則において「施行前の違反行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」との経過規定が設けられている場合、当該附則は罰則の適用関係を定める総則的な規定である。したがって、判決書における法令の摘示としては、直接の処罰根拠となる旧法の罰則規定を掲げれば十分であり、適用すべき罰則の根拠を導くための附則まで判示することを要しない。
重要事実
被告人が旧麻薬取締法(昭和23年法律第123号)に違反する行為を行った後、同法が廃止され、新たに新麻薬取締法(昭和28年法律第14号)が施行された。新法附則第16項には、施行前の行為に対しなお従前の例による旨の規定があった。第一審判決は旧法の罰則を適用したが、判決文中に当該附則の記載がなかったため、弁護人は法令適用の遺脱があるとして上告した。
あてはめ
本件における新法附則16項は、法の不遡及の原則に基づき、旧法下の行為に対して旧罰則を継続適用させるための総則的・橋渡し的な規定にすぎない。実体的な犯罪構成要件や刑罰の種類・分量を定めているのはあくまで旧法の罰則規定そのものである。したがって、裁判所が旧法の規定を引用して刑を言い渡した以上、その前提となる附則の文言を欠いたとしても、実体法上の適用に誤りがあるとはいえず、判決の結論に影響を及ぼすような法令適用の不備は認められない。
結論
判決において旧法の罰則規定を掲げれば足り、新法附則まで判示しなくても法令適用の遺脱には当たらない。
実務上の射程
法令の改廃に伴う経過措置の摘示に関する実務上の取扱いを明示したものである。罪刑法定主義の観点からは処罰根拠を明確にすべきだが、本判例によれば、実体的な罰則規定さえ摘示されていれば足り、技術的な経過規定(附則)の省略は上告理由となるような違法を構成しない。
事件番号: 昭和24(れ)2551 / 裁判年月日: 昭和25年3月24日 / 結論: 棄却
麻藥取締法附則第七四條は同法第六五條に掲げる法令廢止前の行爲に對する罰則の適用については、刑の廢止變更があつても、刑法第六條に舊刑訴法第三六三條第二號の適用を排除して常に行爲時法の規定によるべきことを規定した趣旨である。