判旨
公職選挙法252条1項による選挙権および被選挙権の停止規定は、憲法14条1項の法の下の平等および15条の公務員選定罷免権に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法252条1項が、特定の犯罪者に対して一律に選挙権および被選挙権を制限することが、憲法14条1項(法の下の平等)および憲法15条(参政権・公務員選定罷免権)に違反し、違憲とならないか。
規範
公職選挙法252条1項に定める、選挙犯罪を犯した者に対する選挙権および被選挙権の停止(欠格条項)は、選挙の公正を確保するための合理的な制限であり、憲法14条1項および15条に違反するものではない。
重要事実
被告人は、選挙に際して投票の取りまとめ等の選挙運動の報酬および資金として金員の供与を受けた(買収罪等)。これに対し、公職選挙法に基づき有罪判決とともに選挙権等の停止が課されたが、被告人は、選挙実費の前渡金に過ぎず報酬ではないと主張して事実誤認を訴えるとともに、同法252条1項の停止規定が憲法14条および15条に違反するとして上告した。
あてはめ
最高裁判所は、過去の大法廷判決(昭和30年2月9日判決、昭和25年4月26日判決)を引用し、本規定の合憲性は既に明らかであるとした。選挙の公正を害する罪を犯した者に対し、一定期間の参政権を停止することは、選挙制度の適正な運用と民主主義の根幹を守るための合理的かつ必要な制約であると判断される。本件においても、被告人が受け取った金員は単なる実費ではなく「投票取纒等選挙運動の報酬並資金」であると認定されており、その性質に照らせば、同規定を適用することに合理性がある。
結論
公職選挙法252条1項は合憲であり、被告人に対する選挙権等の停止は有効である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
選挙犯罪に伴う参政権制限の合憲性を確認した判例である。答案上では、権利の重要性を踏まえつつも「選挙の公正」という極めて高い公共の利益に基づく制限の合理性を論じる際の根拠として用いる。ただし、現在の判例理論(在外邦人選挙権制限違憲訴訟等)に照らせば、制限が必要不可欠なものかという厳格な審査が求められる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和29(あ)2817 / 裁判年月日: 昭和30年5月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法252条が定める選挙犯罪等による被選挙権等の停止規定は、憲法14条の法の下の平等および44条の議員および選挙人の資格に関する規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が公職選挙法違反の罪を犯し、同法252条に基づき、一定期間の選挙権および被選挙権の停止を命じられた。被告人側は、同条が憲…