被告人A、同Bの弁護人馬橋隆二の上告趣意第一点は、違憲をいうが、所論第三、第五の各事実は、公文書偽造の犯罪事実であり、同第六、第一〇の各事実は、判示公印の押してある用紙各一枚を与えて右公文書偽造に協力した不正の行為をしたことに関し収賄した犯罪事実であつて、前者と後者とは、同一の犯罪事実ではないから、違憲の主張は、その前提を欠くものである。註。所論は憲法三九条違反の主張である。
公文書偽造に協力して加重収賄をした場合は両罪は同一犯罪か
刑法155条,刑法197条の3第2項,憲法39条
判旨
公文書偽造の罪と、その偽造に協力する目的で公印の押された用紙を交付したことによる収賄の罪は、同一の犯罪事実ではない。
問題の所在(論点)
公文書偽造の罪と、当該偽造に協力する目的で収賄した罪が、憲法上の二重処罰禁止等の対象となる「同一の犯罪事実」に当たるか。
規範
二重処罰の禁止(憲法39条)等の観点から問題となる「同一の犯罪事実」に当たるか否かは、各罪の構成要件的行為および保護法益の異同、並びに具体的態様に照らして判断される。
重要事実
被告人らは、公文書偽造を行うとともに、その偽造に協力するために判示公印の押してある用紙各一枚を与えて不正な行為をし、これに関して収賄した。
あてはめ
公文書偽造の事実は、文書の真正を害する行為を内容とするものである。これに対し、公印のある用紙を交付して収賄した事実は、公務の廉潔性および公務に対する社会の信頼を害する不正な行為を内容とするものである。両者は行為の態様および性質を異にする別個の事実に該当する。
結論
公文書偽造罪と収賄罪は同一の犯罪事実ではないため、これらを併せて処罰しても違憲等の問題は生じない。
実務上の射程
数罪が観念的競合や牽連犯の関係にある場合でも、憲法39条にいう「同一の犯罪」の成否を検討する際の基礎的な判断枠組みとして、行為の性質の差異を強調するものである。
事件番号: 昭和31(あ)2106 / 裁判年月日: 昭和34年6月30日 / 結論: 棄却
上田市公安委員会の補助機関として、法定の要件を備えた者に対する運転免許証の作成交付の事務を担当していた上田市警察署長の事務補助者として運転免許証の作成交付の事務を担当していた警察官(巡査)が、法定の要件を備えていない無資格者に対する自動車運転免許証を擅に作成するときは、公文書偽造罪を構成する。
事件番号: 昭和30(あ)1876 / 裁判年月日: 昭和32年1月24日 / 結論: 棄却
贈賄者が別件で無罪になつたからといつて、その別件の既判力が本件収賄等被告事件に及ぶ道理がない。
事件番号: 昭和27(あ)4600 / 裁判年月日: 昭和28年8月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】先行する犯罪の収益分配ではなく、その発覚を防止する目的でなされた別個の行為については、社会通念上も経験則上も別個の犯罪事実として認定することが可能である。 第1 事案の概要:被告人Cは、第一審判決において判示された第十の事実と、第二十一の内D関係の事実が、実態としては単一の社会的事実であると主張し…
事件番号: 昭和28(あ)4831 / 裁判年月日: 昭和30年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の一人に対する有罪判決が、証拠能力のない証拠を事実認定に用いた訴訟手続の法令違反により破棄された場合であっても、その違法が当然に他の共同被告人の事実認定に影響を及ぼし、上告理由となるものではない。 第1 事案の概要:本件において、被告人とともに審理を受けていた相被告人の有罪部分が、原審(控訴…