収賄した公務員が、法令上管掌する職務に関してではなく、その職務に密接な関係を有する行為につき不正の行為をなした場合にも刑法第一九七条ノ三第一項の罪が成立する。
収賄した公務員が職務に密接な関係を有する行為につき不正の行為を為した場合と刑法第一九七条ノ三第一項の罪の成否
刑法197条ノ3
判旨
加重収賄罪における「職務」には、法令上管掌する職務そのものだけでなく、これに密接な関係を有する準職務行為や事実上所管する職務行為も含まれる。そのため、これらに関連して不正な行為をし、または相当の行為をしなかった場合にも同罪が成立する。
問題の所在(論点)
加重収賄罪(刑法197条の3)の構成要件である「職務」の範囲に、法令上の職務権限に直接属さない「準職務行為」や「事実上所管する職務行為」が含まれるか。
規範
刑法197条の収賄罪における「職務」とは、公務員が法令上管掌する職務のみならず、その職務に密接な関係を有する準職務行為、または事実上所管する職務行為をも含む。したがって、これらに関連して賄賂を収受し、その上で不正な行為を行い、または相当の行為をしないときは、刑法197条の3(現行197条の3第1項・第2項相当)の加重収賄罪が成立する。
重要事実
本件において、公務員である被告人が、自身の法令上の職務そのものではないが、その職務に密接な関係を有する「準職務行為」または「事実上所管する職務行為」に関して賄賂を収受した。その上で、当該行為につき、不正な行為を行い、あるいは本来すべき相当の行為を行わなかった(※具体的な事案の詳細は判決文からは不明)。
事件番号: 昭和31(あ)2106 / 裁判年月日: 昭和34年6月30日 / 結論: 棄却
上田市公安委員会の補助機関として、法定の要件を備えた者に対する運転免許証の作成交付の事務を担当していた上田市警察署長の事務補助者として運転免許証の作成交付の事務を担当していた警察官(巡査)が、法定の要件を備えていない無資格者に対する自動車運転免許証を擅に作成するときは、公文書偽造罪を構成する。
あてはめ
加重収賄罪において、法令上の職務そのものに関して不正が行われた場合と、密接な関係にある準職務行為等に関して不正が行われた場合とでは、公務の適正およびこれに対する社会の信頼を害する程度において差異はなく、同様に加重処罰すべき事情が存在する。したがって、準職務行為や事実上の職務行為に関しても、収賄罪の客体となる「職務」に含まれると解すべきであり、これに関連して不正な行為等に及んだ以上、加重収賄罪の成立を免れない。
結論
被告人の行為について、刑法197条の3(加重収賄罪)の成立を認めた原判断は妥当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
収賄罪全般における「職務関連性」の解釈指針として重要である。答案上では、具体的権限を欠く行為であっても、担当職務と密接な関連があれば「職務」に含める論拠として活用する。加重収賄罪のみならず、単純収賄罪(197条1項)の職務性の判断においても共通して適用される枠組みである。
事件番号: 昭和30(あ)762 / 裁判年月日: 昭和32年2月26日 / 結論: 棄却
刑法第一九七条にいう公務員の職務に関しというのは、公務員が法令上管掌する職務のみならず、その職務に密接な関係を有するいわば準職務行為または事実上所管する職務行為に関する場合も含む。