刑訴三二一条一項二号が、被告人以外の者の検察官の面前における供述を録取した書面につき、「その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき」を要件として証拠能力を認めることとしたのは、右のような死亡等の事由でその供述の再現をはかることができない場合であるから、その供述について反対尋問の機会を与えたか否かを問わないでも、憲法三七条二項の規定に反するものではないとした趣旨に解される(昭和二六年(あ)二三五七号同二七年四月九日大法廷判決、集六、四、五八四頁)。
刑訴法第三二一条第一項第二号の法意
刑訴法321条1項2号,憲法37条2項
判旨
刑事訴訟法第321条第1項第2号前段は、証人の死亡等により反対尋問が不可能な場合に検察官面前調書の証拠能力を認めるものであり、憲法第37条第2項に反しない。また、供述者が死亡した場合には同号後段の「特信情況」の比較衡量規定は適用されず、裁判所の裁量により証拠採用し得る。
問題の所在(論点)
供述者が公判期日前に死亡したことにより反対尋問が不可能な場合において、検察官面前調書を証拠として採用することは、憲法37条2項(証人審問権)および刑訴法321条1項2号に違反しないか。
規範
1. 憲法37条2項は被告人に審問の機会を保障するが、審問不可能な供述を録取した書面の証拠能力を絶対的に否定する趣旨ではない。2. 刑訴法321条1項2号前段が、供述者の死亡・所在不明等の事由により公判供述が不可能な場合に検察官面前調書の証拠能力を認めるのは、伝聞例外の必要性に基づく合理的な規定であり、憲法に反しない。3. 同号後段但書は公判供述が存在することを前提とするため、死亡により供述がない場合には適用されず、証拠採用の可否は事実審裁判官の裁量に委ねられる。
重要事実
被告人以外の者であるAが、検察官事務取扱副検事に対して供述を行い、その内容が供述調書に録取された。しかし、Aは第一審の第1回公判期日前の段階で死亡した。第1審裁判所は、供述者Aが死亡により公判供述が不可能であるとして、当該検察官面前調書を事実認定の資料として採用した。これに対し、被告人側は、反対尋問の機会がない証拠を採用することは憲法37条2項、31条に違反し、また刑訴法321条1項2号の要件を満たさないと主張して上告した。
あてはめ
本件における供述者Aは、第1回公判期日前の昭和28年8月6日に死亡しており、刑訴法321条1項2号前段にいう「供述者が死亡……したため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき」に該当する。この場合、反対尋問の機会を欠くとしても憲法の要請に反するものではない。また、Aが死亡している以上、公判供述との対比を前提とする同号後段但書(特信情況の比較)の適用はなく、第1審判決がAの検察官面前調書を証拠として採用したことは、事実審裁判官の正当な裁量の範囲内といえる。
結論
死亡により反対尋問が不可能な検察官面前調書を証拠採用することは、刑訴法321条1項2号前段に基づき適法であり、憲法にも違反しない。
実務上の射程
伝聞例外のうち、供述不能(死亡等)の場合の検察官面前調書の証拠能力に関するリーディングケースである。答案上は、321条1項2号後段(相反供述)の「特信情況」の検討が不要であることを示す根拠として、供述不能の要件該当性を確認した上で本判例の論理を引用する。
事件番号: 昭和24(れ)1036 / 裁判年月日: 昭和24年12月28日 / 結論: 棄却
記録を査閲するに、所論のAについては第一審公判廷において辯護人から證人として尋問の請求があつて、同裁判所は右申請を許容しその第二回公判において同人を證人として尋問し、もつて被告人に對して反對尋問の機會を與えていることが認められる。しからば原審において右Aにつき、辯護人から證人尋問の請求があつたのに對し、原審はこれを採用…