判旨
平和条約の規定の効力にかかわらず、自らの自由意思により他国の国籍を取得した者は出入国管理令上の「外国人」に該当し、また政治亡命者としての事実が認められない以上、国際法遵守の原則(憲法98条2項)に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 平和条約の効力にかかわらず、自由意思で他国籍を取得した者を「外国人」と認定できるか。2. 政治亡命者としての事実が認められない場合に、憲法98条2項違反の主張が認められるか。
規範
1. 出入国管理上の「外国人」の該当性は、条約の規定のみならず、本人の自由意思による国籍取得の有無といった事実関係に基づき判断される。2. 憲法98条2項の国際法遵守の原則との関係では、政治亡命者としての実態が証拠上認められない限り、その保護を前提とする憲法違反の主張は成立しない。
重要事実
被告人は出入国管理令(当時)違反に問われたが、平和条約10条の無効を主張して自らの外国人該当性を否定した。また、自らを政治亡命者であると主張し、日本側に保護を求めていたとして、処罰や強制送還が憲法98条2項(国際法遵守)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 被告人は「在外台僑国籍処理弁法」に基づき、その自由意思によって中華民国国籍を取得したことが認められる。したがって、平和条約10条の効力の有無にかかわらず、被告人は「外国人」に該当すると解するのが相当である。2. 被告人が政治亡命者として保護を求めた事実は、記録上の全証拠に照らしても認められない。前提となる事実が欠如している以上、国際法上の義務違反をいう主張は失当である。
結論
被告人は出入国管理令上の外国人に該当し、また政治亡命者としての事実も認められないため、憲法98条2項違反等の上告理由は採用できず、上告を棄却する。
実務上の射程
国籍喪失・取得の判断において、条約のみならず実体的な手続や本人の自由意思を重視する実務上の運用を支える。また、国際法上の権利享受を主張する際には、その前提となる事実(亡命者の実態等)の立証が不可欠であることを示す。
事件番号: 昭和35(あ)2319 / 裁判年月日: 昭和38年3月22日 / 結論: 棄却
出入口管理令第三条、第七〇条は憲法前文に違反するものではない。
事件番号: 昭和39(あ)911 / 裁判年月日: 昭和40年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】出入国管理令による出国手続の義務付け及び旅券法に基づく旅券の発給制限は、憲法22条2項が保障する外国移住の自由を不当に制限するものではなく、公共の福祉による合理的な制限として合憲である。 第1 事案の概要:被告人は、有効な旅券を所持せず、かつ出入国管理令に基づく正規の出国審査手続を経ることなく日本…