原審は「被告人らは、もし運転中止の要求に応じなければ運転手Aに対し危害をも加えかねない気勢を示して同人を畏怖せしめた」事実をも認定しているのであるから、かような事実を以て同条にいわゆる「威力」に該るものとした原判決は正当である。
刑法第二三四条にいう「威力」にあたる一事例
刑法234条
判旨
刑法234条の威力業務妨害罪における「威力」とは、人の自由意志を制圧するに足りる勢力を意味し、具体的には業務遂行の意思を制圧するに足りる不当の勢威一般を指す。運転中止の要求に応じなければ危害を加えかねない気勢を示して畏怖させる行為は、これに該当する。
問題の所在(論点)
威力業務妨害罪(刑法234条)における「威力」の意義、および危害を加えかねない気勢を示して相手方を畏怖させる行為が同条の「威力」に該当するか。
規範
刑法234条にいう「威力」とは、業務遂行の意思を制圧するに足りる不当の勢威一般を指称する。これには、直接的な暴行・脅迫のみならず、相手方を畏怖させ、その自由意志を制圧するに足りる気勢や勢力を示すことも含まれる。
重要事実
被告人らは、運転手Aに対し、もし運転中止の要求に応じなければ危害をも加えかねない気勢を示した。これにより運転手Aを畏怖せしめ、業務の遂行を困難または不能にさせる状況を作り出した。
あてはめ
被告人らは単に要求を突きつけただけでなく、応じない場合に「危害をも加えかねない気勢」を示している。このような態様は、相手方の心理的自由を奪い、業務を継続しようとする意思を制圧するに足りる「不当の勢威」の行使といえる。したがって、当該行為によって運転手Aが畏怖した事実は、威力による業務妨害の構成要件を充足する。
結論
被告人らの行為は刑法234条の「威力」に該当し、威力業務妨害罪が成立する。
実務上の射程
「威力」の定義として『業務遂行の意思を制圧するに足りる不当の勢威一般』というフレーズは、答案上、威力業務妨害罪の規範定立で必須となる。本判決は、物理的な破壊活動等がなくとも、威嚇的な気勢によって相手を畏怖させれば威力にあたると判断しており、精神的圧迫による業務妨害事案に広く射程を有する。
事件番号: 昭和39(あ)2834 / 裁判年月日: 昭和40年9月3日 / 結論: 棄却
原判決が、刑法第二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」とは、直接人に暴行を加えたり畏怖させたりする行為に限らず、一定の物的な状態を作為し、その状態のため人の自由な行動を不可能もしくは困難にするものもまたこれに当る旨の法律見解のもとに、他人の店舗南側に接近する道路上に、中古商品ケース外十七点位の家財道具箱を売物として並べ、右店舗南…
事件番号: 昭和37(あ)426 / 裁判年月日: 昭和38年12月26日 / 結論: 棄却
刑法第二三四条の「威力」とは、犯人の威勢、人数および四囲の状勢よりみて、被害者の自由意思を制圧するに足る犯人側の勢力と解する相当とし、かつ右勢力は客観的にみて被害者の自由意思を制圧するに足るものであればよいのであつて、現実に被害者が自由意思を制圧されたことを要するものではないと解すべきである(昭和二五年(れ)第一八六四…
事件番号: 昭和27(あ)6596 / 裁判年月日: 昭和30年10月14日 / 結論: 棄却
債権取立のために執つた手段が、権利行使の方法として社会通念上一般に許容すべきものと認められる程度を逸脱した恐喝手段である場合には、債権額のいかんにかかわらず、右手段により債務者から交付を受けた金員の全額につき恐喝罪が成立する。