債権取立のために執つた手段が、権利行使の方法として社会通念上一般に許容すべきものと認められる程度を逸脱した恐喝手段である場合には、債権額のいかんにかかわらず、右手段により債務者から交付を受けた金員の全額につき恐喝罪が成立する。
権利行使と恐喝罪
刑法249条1項,刑法35条
判旨
権利行使を目的とする行為であっても、権利の範囲を超え、またはその方法が社会通念上一般に忍容すべき程度を逸脱する場合には、恐喝罪が成立する。
問題の所在(論点)
権利行使の手段として行われた脅迫・畏怖による財物の交付について、権利の範囲内であるか否か、あるいはその手段が社会通念上許容されるか否かにより恐喝罪(刑法249条)が成立するか。
規範
他人に対して権利を有する者がその権利を実行することは、その権利の範囲内であり、かつ、その方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えない限り、違法性の問題を生じない。しかし、右の範囲または程度を逸脱するときは違法となり、恐喝罪が成立する。
重要事実
被告人らは、被告人Cの債務者Dに対する債権を取り立てるため、Dが要求に応じない場合に身体に危害を加えるような態度を示した。具体的には「俺達の顔を立てろ」等と申し向け、Dをして「要求に応じなければ身体に危害を加えられるかもしれない」と畏怖させた。その結果、Dから金6万円を交付させたものである。
あてはめ
本件における債権取立の手段は、債務者Dに対し身体への危害を予感させる態度を示して畏怖させるものであった。このような手段は、権利行使の態様として社会通念上一般に忍容すべき限度を明らかに逸脱している。したがって、たとえ債権の実行という目的があったとしても、その手段の違法性は否定されず、交付させた金員全額について恐喝罪の構成要件を充足する。
結論
被告人らの行為は社会通念上の忍容限度を逸脱した権利行使にあたり、債権額のいかんにかかわらず、交付させた6万円全額について恐喝罪が成立する。
実務上の射程
自力救済が原則として禁止される法体系下において、権利実行の違法性阻却の限界を示した重要判例である。答案上は、債権の存在という「正当な目的」がある場合でも、手段の「相当性」を欠けば恐喝罪(または強盗罪等)が成立することを論じる際の基準として用いる。特に行使した権利の範囲内であっても、手段が社会通念上不相当であれば全額について罪が成立する点に注意を要する。
事件番号: 昭和33(あ)2736 / 裁判年月日: 昭和34年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】正当な権利行使として財物を交付させる場合であっても、それが単なる権利行使への仮託にすぎない場合や、権利行使の範囲を逸脱する手段を用いた場合には、恐喝罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人が、被害者に対して何らかの弁償金等を請求する権利を有していた、あるいはその権利行使を名目として、脅迫等の手段を…
事件番号: 昭和22(れ)683 / 裁判年月日: 昭和23年11月4日 / 結論: 棄却
被告人が一定の期間法定の除外事由なくして本件日本刀を所持していた事實が認定される以上、その日本刀の所有權が何人に屬していたとか、或はその間接所有者が何人であつたかというような事情は本件銃砲等所持禁止令違反罪の成立には何等の消長をも來たすものではない。