判旨
公職選挙法252条に基づく選挙権・被選挙権の停止規定は、前犯に対する確定判決を変更したり重ねて刑罰を科したりするものではないため、憲法39条の一事不再理・二重処罰の禁止に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法252条が定める選挙権および被選挙権の停止規定は、すでに処罰を受けた前犯に対して重ねて不利益を課すものとして、憲法39条の後段(二重処罰の禁止)に違反しないか。
規範
憲法39条が禁じる二重処罰とは、特定の犯罪行為に対して重ねて刑罰を科すことを指す。他方、公職選挙法上の選挙権・被選挙権の停止は、犯罪に対する刑罰そのものではなく、特定の犯罪歴を理由とする資格の制限に留まる。したがって、前犯の確定判決を動かしたり、同一の犯罪事実について再び刑罰を科したりするものでない限り、憲法39条には違反しない。
重要事実
上告人(被告人)は、公職選挙法違反等の罪に問われ、同法252条1項および2項の規定により、一定期間の選挙権および被選挙権を停止されることとなった。これに対し弁護人は、当該停止規定が憲法14条(法の下の平等)、44条(投票資格の平等)、および39条(二重処罰の禁止)等に違反し違憲であると主張して上告した。
あてはめ
本件における選挙権および被選挙権の停止は、上告人が犯した前犯に対する確定判決の効力を変更するものではない。また、当該停止措置は選挙の公正を確保するための資格制限的な性質を有するものであり、前犯について再び刑罰を科す「二重の処罰」には該当しない。したがって、所論の規定は憲法39条の趣旨に反するものではないと解される。
結論
公職選挙法252条1項・2項の規定は、憲法39条に違反しない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、刑罰以外の不利益処分(行政罰や資格制限)が憲法39条に抵触するか否かの判断基準を示している。答案上では、二重処罰の禁止の射程を「刑事罰」に限定し、資格制限などの行政的措置については同条の適用外(または違反せず)と論ずる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)3316 / 裁判年月日: 昭和31年2月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法252条に基づく選挙権及び被選挙権の停止は、確定判決による有罪事実に対して重ねて刑罰を科すものではなく、憲法39条の一事不再理の原則に違反しない。また、当該停止措置は法律の定める手続によらない不利益の賦課とはいえず、憲法31条にも違反しない。 第1 事案の概要:上告人は公職選挙法違反の罪…