刑法第一九七条ノ二の第三者供賄の罪については請託のある場合に限り成立するものであることは所論のとおりであるが、第一審判決判示の「被告人Aにつきその支払能力、意思等を打診した結果その頃同所において同被告人から右実務を自己に委嘱されたい旨の請託を受け」云々の事実は証拠により認定するに十分であり、この程度を以つて請託があつたものと認めることができる。
刑法第一九七条ノ二の第三者供賄罪についての請託があつたものと認められる事例−判示の程度
刑法197条ノ2,刑訴法335条
判旨
第三者供賄罪(刑法197条の2)の成立に必要な「請託」とは、公務員に対し、職務に関し特定の態様の職務執行を行うべきことを依頼することをいい、本件のように実務の委嘱を求める旨の打診や依頼があればこれに該当する。
問題の所在(論点)
刑法197条の2(第三者供賄罪)にいう「請託」の意義とその認定基準。
規範
刑法197条の2の第三者供賄罪が成立するためには「請託」があることを要する。ここにいう請託とは、職務に関し、一定の職務上の行為をなすべきこと、またはなさないことを依頼することをいう。その態様は、必ずしも詳細な条件を付した明示的なものに限られず、特定の事務に関し自己の便宜を図るよう依頼するなどの抽象的な内容であっても、職務執行に影響を及ぼし得る意思表示があれば足りる。
重要事実
被告人Bは、被告人Aの支払能力や意思等を打診した結果、その頃、同被告人から特定の実務を自己に委嘱されたい旨の依頼を受けた。この事態に関し、第三者供賄罪の構成要件たる「請託」があったといえるか、その認定の程度が争点となった。
あてはめ
本件において、被告人Aから「実務を自己に委嘱されたい」との趣旨で打診・依頼がなされている。これは、公務員の職務内容に含まれる特定の事務執行(実務の委嘱)について、特定の者(A)に有利な取り計らいを求める意思表示に他ならない。したがって、このような依頼がなされたという事実があれば、第三者供賄罪の要件たる請託があったと認めるに十分である。
結論
特定の事務を委嘱されたい旨の依頼があれば、第三者供賄罪の「請託」があったと認められる。
実務上の射程
本判決は第三者供賄罪における請託の認定について示したものであるが、単純収賄罪(197条1項後段)や加重収賄罪(197条の3)における請託の意義についても同様に解される。答案上、請託の有無が争点となる場合は、職務に関する特定の便宜供与を求める意思表示があったことを本判決の基準に沿って具体的事実から摘示すべきである。
事件番号: 昭和29(あ)2409 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
一 室内装飾工事の請負人が特別調達局施行の工事につき同局勤務の総理府事務官に対し、一定の職務行為の依頼でなしに、単にその工事の監督促進につき何かと世話になつた謝礼および将来好意ある取扱を受けたい趣旨で金員を供与するのは、刑法第一九八条第一九七条第一項後段にいう請託を贈賄したことにはならない。 二 右の場合これを刑法第一…