賄賂は職務行為に関するものであれば足り、個々の職務行為と賄賂との間に対価的関係のあることを必要とするものではない。
賄賂と職務行為との関係。
刑法197条,刑法198条
判旨
賄賂罪における賄賂とは、職務行為に対する対価であれば足り、個々の具体的な職務行為と提供物との間に直接的な対価関係が存在することまでは必要としない。
問題の所在(論点)
賄賂罪の成立において、供与された利益と公務員の個々の具体的な職務行為との間に対価的関係(個別的対価関係)が存在することが必要か。また、社交的儀礼としての性質を持つ贈与が賄賂に該当するか。
規範
賄賂罪(刑法197条1項等)における「賄賂」とは、公務員の職務行為に対する報酬としての利益を指す。その判断にあたっては、利益の供与が職務に関連してなされたものであれば足り、特定の個別の職務行為と賄賂との間に一対一の具体的な対価関係(個別的対価関係)があることまでは必要とされない。
重要事実
被告人は、Aら5名から6回にわたり、職務に関する趣旨のもとで饗応(接待)を受け、あるいは物品を収受した。これらの一連の行為が、慣例上承認された社交的儀礼や単なる感謝の贈物(社交的儀礼の範囲内)に該当するのか、それとも職務に関連した賄賂に該当するのかが争点となった。
あてはめ
本件において、被告人が受けた饗応や物品は、その回数や相手方との関係に照らせば「職務に関し」なされたものと認められる。個々の具体的な職務行為との対応関係が厳密に証明されずとも、職務の執行という包括的な事務に対する報酬としての性質を有していれば賄賂に当たる。また、本件の各饗応等は、社会通念上許容される社交的儀礼や感謝のしるしの範囲を逸脱しており、職務に対する対価性が認められる。
結論
被告人の行為は賄賂罪を構成する。個々の職務行為との間に対価関係がないことを理由に無罪を主張する上告は棄却される。
実務上の射程
包括的収賄罪の理論的基礎となる重要判決である。答案上では、職務に関連した利益供与であれば、特定の請託や具体的案件の処理が存在しなくても「職務に関し」の要件を満たし得ることを論じる際に引用する。
事件番号: 昭和26(あ)5023 / 裁判年月日: 昭和32年2月14日 / 結論: 破棄自判
贈収賄被告事件において、不可分の供述の一部をとつて全体の意味と異る趣旨を認定して職務に関する饗応を認めた判決は証拠法の違反があると共に事実の誤認があつて刑訴第四一一条第一号第三号によりこれを破棄した上無罪の言渡をすることができる。