関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)第七五条は、貨物をいわゆる通関手続を経ないで輸出する所為に対しては適用がなく、関税を逋脱する意思をもつて貨物を輸入する所為だけを処罰するものと解するのを相当とする。
関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)第七五条の法意
関税法(昭和29年法律61号による改正前のもの)75条,関税法(昭和29年法律61号による改正前のもの)76条
判旨
関税法75条は、関税を逋脱する意思をもって有税貨物を輸入する行為のみを処罰する趣旨であり、通関手続を経ずに貨物を輸出する行為には適用されない。
問題の所在(論点)
関税法75条の処罰対象に、通関手続を経ない「輸出」行為が含まれるか。同条の罪の成立範囲が問題となる。
規範
関税法75条(当時の規定)の適用範囲について、同条は、関税の徴収を免れる目的をもって、本来課税されるべき貨物を正規の輸入手続を経ずに国内に持ち込む「輸入」行為を処罰対象とする。したがって、通関手続を経ることなく貨物を「輸出」する行為は、同条の構成要件に含まれないと解するのが相当である。
重要事実
被告人が、正規の通関手続を経ることなく貨物を輸出した行為について、関税法75条違反として起訴された事案である。被告人側は、同条の解釈について法令違反がある旨を主張して上告した。
あてはめ
関税法75条は、関税の逋脱(納税の回避)を目的とする有税貨物の輸入行為を処罰する趣旨である。本件において被告人が行ったのは、貨物を国外へ持ち出す「輸出」行為であり、これは同条が予定する「関税を逋脱する意思をもつて有税貨物を輸入する所為」には該当しない。したがって、輸出行為に対して同条を適用することはできない。
結論
関税法75条は輸出行為には適用されない。本件輸出行為を処罰しないとした原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
罪刑法定主義の観点から、処罰法規の適用範囲を文言に即して厳格に画定した事例である。輸出と輸入の区別を峻別し、類推解釈を否定する趣旨として理解できる。実務上は、関税法等の行政刑罰において、その目的(関税徴収の確保等)から構成要件を限定的に解釈する際の参考となる。
事件番号: 昭和27(あ)4308 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
懲役刑のみを科する場合には、所論関税法七六条一項本文だけを適用すべく、同条項但書を適用する余地がなく、従つて、同但書所定の原価を確定する必要がないから、原判決には、所論のごとき理由不備又は審理不尽の違法がない。 註。所論は原価若しくは価値を確定しない違法があるとするもの。