本件鉄板及び謄写機の如き(原判文参照)、日米行政協定の実施に伴う関税法等の臨時特例に関する法律(昭和二七年法律第一一二号)の施行前に、合衆国軍隊又はその公認調達機関が在日合衆国軍隊の公用に供するため、商業輸送機関を経由せず、軍用船等により外国から本邦内の合衆国駐留軍基地に搬入し、その搬入につき日本の輸出入に関する法律及び規則に従わなかつた合衆国軍貨物は、右基地から外部に搬出されたときに始めてわが関税法上の「輸入」があつたものと解すべきである。
本邦内に搬入された合衆国軍隊公用貨物と関税法上の「輸入」
関税法2条1号,関税法110条1項1号,日米行政協定の実施に伴う関税法等の臨時特例に関する法律(昭和27年法律112号にして、同33年法律68号による改正前のもの)6条1号,日米行政協定の実施に伴う関税法等の臨時特例に関する法律(昭和27年法律112号にして、同33年法律68号による改正前のもの)12条,日米行政協定の実施に伴う関税法等の臨時特例に関する法律(昭和27年法律112号にして、同33年法律68号による改正前のもの)附則1項,日米行政協定の実施に伴う関税法等の臨時特例に関する法律(昭和27年法律112号にして、同33年法律68号による改正前のもの)附則2項,日米行政協定の実施に伴う関税法等の臨時特例に関する法律昭和33年法律68号附則1項,日米行政協定の実施に伴う関税法等の臨時特例に関する法律昭和33年法律68号附則2項
判旨
在日米軍施設内に所在し、いまだ本邦に輸入されていない物品につき、税関長の許可を受けることなく施設外へ搬出して関税を免れる行為は、関税法110条1項1号の関税脱税罪を構成する。
問題の所在(論点)
在日米軍施設内に所在する、適法な輸入手続を経ていない物品を、税関長の許可なく施設外(国内一般市場)へ搬出する行為が、関税法110条1項1号の関税脱税罪を構成するか。
規範
関税法上の「輸入」とは、外国から本邦に到着した貨物を本邦に引き取ること(関税法2条1項1号参照)を指すところ、在日米軍から払い下げられた物品であっても、適法な輸入手続を経ていないものは「いまだ本邦に輸入されていない物品」に該当する。これを税関長の許可なく保税地域等に類する米軍施設から国内へ持ち出す行為は、偽りその他不正の行為により関税を免れるものとして、同法110条1項1号に該当する。
重要事実
被告人らは、勤務先のA株式会社において、在日米軍から「ヘビーアンプリペアート」スクラップおよびアルミニウム屑の払い下げを受けていた。しかし、被告人らはこれら本来の払い下げ品の代替品として、本邦にいまだ輸入されていなかった鉄板および謄写機を、税関長の許可を受けることなく相模サルベージヤード(駐留米軍工機補給所)から搬出し、関税を免れた。被告人側は、当該物品はすでに本邦内に存在し、輸入にあたらない等と主張して上告した。
あてはめ
本件の鉄板および謄写機は、在日米軍の管理下にあり、いまだ適法な輸入手続がなされておらず「本邦に輸入されていない物品」であると認められる。被告人らは、正規の払い下げ品(スクラップ等)の代替品としてこれらを不正に搬出しており、この行為は税関長の許可を脱して関税の徴収を免れる「偽りその他不正の行為」に他ならない。したがって、当該物品を施設外へ搬出した所為は、同条項の構成要件を充足すると判断される。
結論
被告人らの所為は関税法110条1項1号に該当し、関税脱税罪が成立する。上告棄却。
実務上の射程
在日米軍施設が関税法上の特殊な地位(一種の保税空間)にあることを前提に、そこから国内への物品移動が「輸入」概念に含まれ得ることを示した。行政法規的な側面が強いが、刑罰規定の解釈として、輸入手続の未了という法的状態が犯罪成立の鍵となる点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和30(あ)271 / 裁判年月日: 昭和33年3月4日 / 結論: 棄却
船舶により貨物密輸出の予備をなした場合において、その用に供した船舶を旧関税法第八三条によることなく刑法第一九条第一項第一号第二項により没収した違法があつても、右違法は未だ刑訴第四一一条第一号を適用すべきものとは認められない。
事件番号: 昭和31(あ)3845 / 裁判年月日: 昭和34年2月13日 / 結論: 棄却
私設保税倉庫に蔵置中の外国商品を占領軍要員以外の者に販売する目的で庫出するときは、関税逋脱罪を構成する。
事件番号: 昭和36(あ)2714 / 裁判年月日: 昭和38年3月19日 / 結論: 棄却
一 合衆国軍隊の構成員等以外の者が、「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う関税法等の臨時特例に関する法律」第六条の規定の適用を受けた物品である自動車を日本国内において譲り受けようとするときは(同法第一二条第一項の適用を受ける譲受)、昭和三三年法律第六八号による改正前においても、旧物…