A所有の田圃にBが植付け所有した稲苗を土中に埋没させて毀棄した事件において、告訴状がA名義でなされていても、他の証拠によつて、右告訴が苗の被害者Bの委任によるものであることがうかがわれ、またB自身も検察官に対し告訴の意思を表示している場合は、適法な告訴があるものと認めるべきである。
適法な告訴があつたものと認められる事例
刑訴法230条,刑訴法338条4号
判旨
親告罪における告訴は、被害者の委任に基づき代行された書面(告訴状)による場合であっても、被害者自身が捜査機関に対し直接訴追を求める意思を表示しているときは、適法な告訴として認められる。
問題の所在(論点)
親告罪において、被害者以外の者(父)の名義で作成された告訴状が提出された場合に、被害者自身の訴追意思を認めて適法な告訴があったと判断できるか。告訴の有効性と訴追意思の有無が争点となった。
規範
告訴(刑訴法230条以下)は、捜査機関に対し犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示である。告訴の方式として書面を用いる場合、その名義が被害者本人でなくとも、被害者の委任に基づき作成され、かつ被害者自身に犯人の訴追を求める明確な意思が認められるのであれば、告訴としての効力を有する。
重要事実
親告罪に該当する事件において、告訴状が被害者A本人の名義ではなく、Aの委任を受けた父Bの名義で提出された。原審は、告訴状が告訴権者からなされていないこと、およびAに積極的な訴追の意思表示を認める証拠がないことを理由に、告訴を欠くとして公訴を棄却した。しかし、記録上、Aは検察官の供述調書において、被告人らに対する訴追を求める意思を表示していた。
事件番号: 昭和28(あ)4321 / 裁判年月日: 昭和29年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】親告罪において、被害者が未成年者である場合、その法定代理人は独立して告訴権を行使することができる(刑事訴訟法231条1項)。本件では被害者の父による告訴が有効であり、訴訟条件を欠くものではない。 第1 事案の概要:被告人が親告罪に該当する罪を犯したとされる事案において、昭和27年2月20日、被害者…
あてはめ
本件では、被害者Aの検察官に対する供述調書から、提出された告訴状はAの委任に基づき父Bの名義でなされたものであることが認められる。さらに、A自身が直接検察官に対して被告人らの訴追を求める意思を明確に表示している。告訴の要諦は、告訴権者による処罰の意思表示にあるところ、被害者自身が適法に訴追意思を表明している以上、書面の形式的不備をもって告訴を否定すべきではない。
結論
本件には適法な告訴が存在すると認められるため、告訴を欠くとした原判決は誤りであり、破棄・差戻しを免れない。
実務上の射程
告訴の有効性は、形式的な書面の体裁よりも、実質的な処罰・訴追意思の有無によって判断される。実務上、名義人相違や代理告訴の有効性が争われる場面で、被害者本人の供述等から訴追意思を補完するロジックとして活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)1287 / 裁判年月日: 昭和29年7月14日 / 結論: 棄却
所論告訴状名義者はいずれも本件器物の管理者であつて、告訴権を有するものであることは裁判所会計事務に関する規定上明らかである。
事件番号: 昭和37(あ)1191 / 裁判年月日: 昭和38年12月24日 / 結論: 破棄自判
一 刑法第二五八条にいう「公務所ノ用ニ供スル文書」とは、公務所において現に使用し又は使用に供する目的で保管している文書を総称しその文書が証明の用に供せられるべき性質を有することを要するものではない。 二 日本国有鉄道の駅職員が列車の遅延、運転中止を告げ、これを詫びる旨白墨で記載して駅待合室に提示した急告板を勝手に取りは…
事件番号: 昭和26(あ)5317 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公訴事実に示された偽造の事実を、原判決が偽造教唆の事実として認定・判示することは、判決に影響を及ぼすような判断遺脱には当たらない。 第1 事案の概要:第一審判決の第四において「偽造」に相当するとされていた公訴事実につき、原判決がこれに基づき「偽造教唆」と認定判示して判断を示した事案である。上告人は…