判旨
法令の改廃により特定の地域が「外国」の定義から外れたとしても、無免許での輸出入を禁ずるという関税法上の法規範及び可罰性が維持されている限り、刑事訴訟法402条(現337条)2号の「刑の廃止」には当たらない。
問題の所在(論点)
特定の地域を「外国」の定義から除外する法令の改正があった場合、改正前に当該地域との間で行われた無免許輸出入行為について、刑事訴訟法337条2号(旧402条2号)にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当するか。
規範
「刑の廃止」とは、単なる事実関係の変更や事実上の規制緩和を指すのではなく、当該行為の可罰性に関する法的価値判断が変更され、法規範自体が消滅した場合を指す。法令の変更があっても、行為当時の法規範が実質的に存続し、その行為の可罰性に関する法的価値に変化がないと認められるときは、刑の廃止があったとはいえない。
重要事実
被告人らは、当時の関税法に基づき「外国」とみなされていた地域との間で、免許を受けずに貨物の輸出入を行ったとして、関税法違反(無免許輸出入罪)に問われた。しかし、起訴後の昭和27年2月11日に施行された大蔵省令5号により、当該地域が「外国とみなされる地域」から除外された。被告人側は、この省令の施行により「犯罪後の法令により刑が廃止された場合」に該当するとして、免訴を主張した。
あてはめ
関税法の目的は無免許での輸出入を禁ずることにあり、省令によって「外国」とみなされる地域に変更が生じたとしても、免許を受けずに貨物を輸出入することを禁止する関税法上の規範自体は、省令施行の前後を通じて依然として存続している。したがって、無免許輸出入という行為の可罰性に関する法的価値も終始変わることはない。本件の地域変更は事実上の規制対象の変化にすぎず、禁圧すべき行為の違法性評価を否定したものではないため、刑の廃止があったとは認められない。
結論
本件における法令の改正は「刑の廃止」に該当しない。したがって、原審が免訴を言い渡さず有罪とした判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
法令改正により事実上の処罰対象から外れた場合でも、法規範(禁止の趣旨)が維持されているかを検討する際に用いる。いわゆる「限時法」や、本件のような「事実の変動に基づく法令改正」について、一律に刑の廃止(免訴)を認めず、可罰的評価の存否を実質的に判断する枠組みとして答案上機能する。
事件番号: 昭和28(あ)371 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: 棄却
口の島を含む北緯三〇度以南、北緯二九度以北の南西諸島が外国とみなされていた当時、免許を受けないで日本内地から同地域へ、若しくは同地域から日本内地へ貨物を密輸出し、若しくは密輸入した罪については、その後右地域がわが国に復帰し、外国とみなされなくなつても、刑の廃止があつたものとはいえない。