判旨
犯罪後の法令改正により、行為当時の地理的範囲が外国とみなされなくなった場合、犯罪を構成しないものとして刑訴法337条2号により免訴とすべきである。
問題の所在(論点)
行為当時は「外国」として密輸出入罪の対象であった地域が、犯罪後の法令改正により「国内」とみなされるようになった場合、刑法6条及び刑事訴訟法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきか。
規範
犯罪後の法令改正によって、行為当時に処罰の対象となっていた事実関係(特定の地域間での輸出入等)が、犯罪を構成しないものと改められた場合には、当該行為の可罰性は失われたものというべきである。この場合、刑事訴訟法337条2号に基づき、確定判決を経ることなく直ちに免訴の判決を言い渡さなければならない。
重要事実
被告人は昭和25年5月から6月にかけて、当時旧関税法の適用上「外国」とみなされていた南西諸島b島との間で、税関の免許を受けずに杉板や黒糖等を輸出入(密貿易)した。しかし、昭和28年の法令改正(政令第407号)により、当該地域は同年12月25日以降、外国とみなされず日本邦内の地域として扱われることとなった。
あてはめ
被告人の行為時、南西諸島b島は外国とみなされ、同島との物品の往来は輸出入として処罰対象であった。しかし、その後の法令改正により同地域は本邦の地域となり、同島との間での物品の移動はもはや関税法上の「輸出」や「輸入」には該当しなくなった。これにより、被告人が行った行為は「犯罪を構成しないもの」へと変化し、その可罰性が失われたといえる。したがって、本件公訴事実は犯罪後の法令により刑が廃止された場合に準じると解される。
結論
被告人の行為は、法令の改正により犯罪を構成しないものとなったため、刑事訴訟法337条2号を適用し、免訴を言い渡すべきである。
実務上の射程
限時法や事実関係の変遷に伴う「刑の廃止」の判断において、判例(いわゆる大連事件等)が示す「法律的見解の変更」がある場合に免訴とする枠組みを示す。答案上は、単なる事実の変動ではなく、法的な評価の変更により処罰の根拠が失われた場合に刑訴法337条2号を導く素材として活用する。
事件番号: 昭和27(あ)3767 / 裁判年月日: 昭和32年12月10日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】北緯30度以南の南西諸島を宛先とする密輸出行為について、その後の領土返還により当該地域が「外国」とみなされなくなった場合、刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」があったものと解すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和26年4月、当時関税法の適用上「外国」とみなされていた北緯30度以南の南西諸…