判旨
北緯30度以南の南西諸島を宛先とする密輸出行為について、その後の領土返還により当該地域が「外国」とみなされなくなった場合、刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」があったものと解すべきである。
問題の所在(論点)
犯罪当時「外国」とみなされていた地域への密輸出行為について、その後の法令等の変更により当該地域が「外国」にあたらなくなった場合、刑訴法337条2号の「刑の廃止」があったものとして免訴すべきか。
規範
犯罪後の法令により当該行為が罪を構成しなくなった場合、または刑が廃止された場合には、刑訴法337条2号に基づき免訴の判決を言い渡すべきである。特に関税法違反において、対象地域が法令の改正や条約の発効により「外国」から除外された場合は、実質的な処罰根拠が消滅したものとして「刑の廃止」に該当する。
重要事実
被告人は、昭和26年4月、当時関税法の適用上「外国」とみなされていた北緯30度以南の南西諸島へ、免許を受けずに貨物を輸出しようと企て、鹿児島港において漁船に貨物を積載して密輸出を行ったとして、関税法違反の罪に問われた。しかし、原判決後の昭和28年12月25日、当該地域は日本に返還され、関税法の適用上も「外国」とはみなされず本邦の地域とされるに至った。
あてはめ
本件行為時において、北緯30度以南の南西諸島は関税法の適用上「外国」とみなされていたため、無免許での貨物輸出は同法違反を構成した。しかし、昭和28年の領土返還以降、当該地域は「外国」としての性質を失い、本邦の一部となった。これにより、当該地域への物品移動を輸出として処罰する根拠が失われた。これは単なる事実関係の変更ではなく、処罰規定の前提となる法的評価の変更であり、原判決後の法令により刑が廃止されたときに該当すると評価される。
結論
被告人を免訴する。原判決を破棄し、刑訴法337条2号を適用して免訴の言渡しを行うべきである。
実務上の射程
本判決は、関税法上の「外国」の定義変更を「刑の廃止」と構成した点に特徴がある。司法試験においては、限時法の理論(事実関係の変遷か法的評価の変更か)に関連する問題として、刑法6条や刑訴法337条2号の解釈において参照されるべき事例である。
事件番号: 昭和26(あ)5027 / 裁判年月日: 昭和32年12月10日 / 結論: 破棄自判
一 密輸入物資の積込先がどこかによつて刑の廃止があると解せられる場合に、それが南西諸島方面というだけで証拠上奄美大島方面、沖繩方面の何れとも認定できないときは、被告人に有利に認定すべきである。 二 奄美大島方面から密輸入した物資を内地で運搬する罪は、奄美大島が外国とみなされなくなつた後は刑の廃止があつたものと解すべきで…