所論判事は、本件犯罪の捜査、第一審、第二審を通じ、ただ第二審第二回公判の判決宣告に関与したのみに過ぎない。従つて、同判事が関与した民事裁判が本件第一審判決における事実認定の証拠に採用されたからといつて、同判事が除斥されるべき職務の執行をしたものということはできない。
刑訴第二〇条七号に当らない一事例 ―民事々件に関与したる裁判官がそれと関連ある刑事々件の判決宣告への関与―
刑訴法20条7号
判旨
刑事裁判に関与した裁判官が、以前に当該事件の事実認定の証拠となった民事裁判に関与していたとしても、刑事訴訟法上の除斥原因には当たらない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法20条に定める裁判官の除斥事由に関し、刑事判決の事実認定に供された証拠資料(民事裁判の記録等)を作成した裁判官が、当該刑事事件の裁判に関与することが除斥原因に該当するか。
規範
刑事訴訟法20条各号に掲げられる除斥原因は限定的に解釈されるべきであり、同条7号の「事件につき前審の裁判に関与したとき」とは、当該刑事事件の直接の下級審の裁判に関与した場合を指す。したがって、証拠資料となった別個の民事裁判に関与したことは、同条の除斥原因には該当しない。
重要事実
被告人の刑事事件において、第二審の判決宣告に関与した裁判官(平峯隆判事)が、以前に本件第一審判決の事実認定の証拠として採用された民事裁判に関与していた。弁護人は、このような裁判官が裁判に関与することは、除斥原因がある裁判官が関与したものであり、憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」による裁判を受ける権利に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和29(あ)4169 / 裁判年月日: 昭和31年12月21日 / 結論: 棄却
第一審裁判官が所論仮処分決定をなした裁判官であるということは、同裁判官を被告人に対する本被告事件審判の職務の執行から除斥するものでないことは、刑訴二〇条各号の規定により明らかであると共に、右の一事を以て同裁判官が不公平な裁判をする虞があつたとも断定することはできない。
あてはめ
本件裁判官は、本件刑事事件の捜査、第一審、第二審の各過程において、第二審の判決宣告に関与したのみである。当該裁判官が以前に関与した民事裁判の内容が、刑事事件の証拠として採用された事実は認められるが、これは刑事訴訟法が予定する「事件につき前審の裁判に関与した」等の除斥事由には当たらない。したがって、当該裁判官に職務執行を妨げるべき法的欠格事由は存在しないといえる。
結論
本件裁判官に除斥原因は認められず、憲法37条1項違反の主張は前提を欠くため、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、刑事訴訟法20条の除斥事由の厳格な解釈を維持するものである。民事裁判と刑事裁判が事実関係において重複し、一方の判断が他方の証拠となる場合であっても、制度的な除斥原因とはならない。実務上、公平性に疑念がある場合は忌避(21条)の手続きを検討すべきであるが、除斥事由の該当性を争う文脈では、本判決の限定解釈が基準となる。
事件番号: 昭和31(あ)4343 / 裁判年月日: 昭和32年4月5日 / 結論: 棄却
私文書偽造罪の判示として「行使の目的を以て」なる文言の記載がなくとも判文の全体からその趣旨が認め得られるときは、判示として欠くるところはない。
事件番号: 昭和28(あ)4639 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が定める「公平な裁判所」とは、裁判官が被告人と個人的な利害関係を持つ等の不偏不党性を欠く状態にない組織を指し、当事者が主観的に不公平と感じるか否かによって決まるものではない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決の量刑が不当であることを理由として、憲法37条1項の保障する「公平な裁判所…
事件番号: 昭和30(あ)2372 / 裁判年月日: 昭和30年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、偏頗の恐れがなく中立公正な裁判所を指し、量刑不当や審理不尽の主張は当然には上告理由としての憲法違反を構成しない。 第1 事案の概要:被告人が、量刑不当および審理不尽を理由として上告を申し立てた事案。弁護人は、これらの事由が刑訴法405条の上告理由に該当…
事件番号: 昭和62(あ)114 / 裁判年月日: 昭和62年12月3日 / 結論: 棄却
誤つて公訴事実の同一性のない訴因の追加を許可し、その訴因についての証拠を取り調べた第一審裁判所は、右誤りを是正するために訴因追加の許可及び証拠の採用を各取消決定をすることができる。