判旨
刑事訴訟法392条2項が規定する職権調査事項について、控訴裁判所は自ら調査することができるが、これを行うべき法的義務を負うものではない。
問題の所在(論点)
控訴裁判所は、刑事訴訟法392条2項に規定された事項(控訴趣意に含まれないが判決に影響を及ぼすべき事由)について、当然に調査すべき義務を負うか。
規範
刑事訴訟法392条2項は、控訴裁判所に対し、控訴趣意に含まれない事項であっても、判決に影響を及ぼすべき事由がある場合には職権で調査できる旨を定めている。しかし、これは裁判所の裁量に委ねられた権限であり、訴訟当事者の申し立てがない限り、裁判所が当然に調査を開始すべき義務までを課したものではない。
重要事実
被告人が量刑不当などを理由に上告した事案。上告趣意において、控訴裁判所(原審)には刑事訴訟法392条2項に基づき職権で調査すべき事項があったにもかかわらず、これを怠ったのは違法である旨が主張された。事案の具体的な罪状や背景となる事実関係については、本判決文からは不明である。
あてはめ
刑事訴訟法392条2項の趣旨に照らせば、同条項は控訴裁判所による職権調査の可能性を認めたものに留まる。最高裁の判例によれば、裁判所が自律的に調査を行うことは妨げられないが、当事者から有効な主張がない場合にまで、網羅的に全ての事項を調査すべき義務を負うと解することはできない。本件においても、原審が第一審の量刑を相当と判断した過程において、特段の義務違反は認められない。
結論
控訴裁判所は、刑事訴訟法392条2項に規定される事項について調査すべき義務を負わない。したがって、原審が職権調査を行わなかったとしても違法とはいえず、上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和25(あ)2637 / 裁判年月日: 昭和27年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴裁判所は、控訴趣意書に包含されない事項について調査しなかったとしても、職権調査規定である刑事訴訟法392条2項に違反するものではない。したがって、控訴審で主張しなかった事項に基づき、上告審で原判決の法令違反等を主張することは適法な上告理由にならない。 第1 事案の概要:被告人側は、第一審判決の…
控訴審における職権調査の「権利性」と「義務性」を区別する際の基礎となる判例である。答案上は、控訴趣意書に記載のない事項を裁判所が取り上げなかったことの違法を論じる際、原則として裁判所に調査義務がないことを示す論拠として用いる。
事件番号: 昭和26(あ)1847 / 裁判年月日: 昭和28年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において、第一審判決が認定していない事実(期待可能性の欠如等)について、裁判所が当然に職権で調査すべき義務を負うものではない。 第1 事案の概要:被告人は第一審で懲役1年6月及び罰金3万円の判決を受けた。これに対し被告人側は、本件犯行が第三者からの脅迫に基づくものであり、期待可能性がなかった…
事件番号: 昭和30(さ)2 / 裁判年月日: 昭和30年9月29日 / 結論: 破棄自判
第一審が法定刑を超えた刑を科した違法がある場合において控訴または上告審が職権調査をなさず、右違法を看過しても、法令に違反したものということはできない。