判旨
執行猶予の条件の変更は、刑法6条にいう「刑の変更」には該当せず、また刑法改正により犯罪後の領土帰属に変更が生じても「刑の廃止」には当たらない。
問題の所在(論点)
刑法25条(執行猶予)の改正が刑法6条の「刑の変更」に該当するか、および領土返還による地域状況の変化が「刑の廃止」として免訴事由(刑訴法337条2号)等に該当するかが問題となる。
規範
刑法6条にいう「刑の変更」とは、刑罰の種類またはその軽重が変更されることを指し、執行猶予の要件・条件といった刑の執行に関する規定の変更はこれに含まれない。また、犯罪後に当該地域が日本国に返還される等の事情は、刑罰法令そのものの廃止を意味する「刑の廃止(刑訴法411条5号)」には当たらない。
重要事実
被告人が奄美群島に関連する犯罪行為を行い、その後の裁判継続中に奄美群島が日本国に返還された。さらに、その間に刑法25条の改正により執行猶予の条件が変更されたため、被告人側はこれが刑法6条の「刑の変更」にあたり新法が適用されるべきであること、および領土返還が「刑の廃止」に準ずるとして免訴や量刑不当を主張して上告した。
あてはめ
執行猶予制度は、言渡された刑の執行を一定期間猶予する制度にすぎず、刑そのものの内容を変更するものではない。したがって、刑法25条の改正は刑の執行条件の変更であり、「刑の変更」には当たらない。また、奄美群島の日本返還は統治権の回復であって、当該犯罪を処罰する根拠となる刑罰法令自体を廃止したものではないから、刑の廃止があった場合には当たらない。
結論
執行猶予条件の改正は刑法6条の刑の変更に当たらず、領土返還も刑の廃止には当たらないため、上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和28(あ)1611 / 裁判年月日: 昭和31年5月23日 / 結論: 棄却
一 北緯二九度以南北緯二七度以北の南西諸島が外国とみなされていた当時免許を受けないで日本内地から同地域へ、若くは同地域から日本内地へ貨物を密輸出し若くは密輸入した罪については、その後右地域が外国とみなされなくなつても、刑の廃止があつたものとはいえない。 二 (裁判官真野毅、同小谷勝重、同藤田八郎、同河村又介、同谷村唯一…
刑法6条の適用範囲を画定する際の重要判例であり、刑罰の「軽重」の比較対象に執行猶予の有利・不利は含まれないことを示す。罪刑法定主義や遡及処罰禁止の議論、および刑罰法令の改廃が問題となる場面での「刑の廃止」の定義(事実上の変更は含まない点)を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和27(あ)6571 / 裁判年月日: 昭和30年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行為後に法令の改正等により、特定の地域が関税法上の外国とみなされる地域から除外されたとしても、それは事実関係の変動にすぎず、刑法6条及び刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」にはあたらない。 第1 事案の概要:被告人は、当時関税法上「外国とみなされる地域」に指定されていた南西諸島中の中の島と、内地と…