所得税法二三八条二項の規定違憲(憲法三一条違反)の主張が欠前提とされた事例
憲法31条,所得税法238条2項
判旨
所得税法上の罰則規定における「情状により」という文言は、憲法31条が要求する刑罰法規の明確性の原則に違反するほど不明確なものではない。
問題の所在(論点)
所得税法238条2項(当時)に規定される、懲役と罰金を併科する場合の要件である「情状により」という文言は、憲法31条の刑罰法規の明確性の原則に照らして違憲といえるか。
規範
刑罰法規が憲法31条に違反するか否かは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、何が禁止され、どのような場合に刑罰が科されるかが、法文から合理的に読み取れるかによって判断される。一般的・抽象的な文言であっても、裁判官による補充的な解釈を通じてその基準が明確になり得るものであれば、明確性の原則に反しない。
重要事実
被告人が所得税法違反等の罪に問われた事案において、弁護人は同法238条2項(現238条3項等に相当)に規定される「情状により」という要件が、その内容が不明確であり、裁判官の恣意的な判断を招くものであるとして、憲法31条(適正手続・罪刑法定主義)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
所得税法238条2項における「情状により」との文言は、犯行の動機、態様、結果、被告人の経歴など、刑の量定に際して考慮されるべき諸般の事情を指すものと解される。このような表現は、個別の事案に応じた適切な刑罰の選択を可能にするための一般的条項として機能しており、その意義は法解釈を通じて十分に特定可能である。したがって、一般の受刑能力者にとって、どのような場合に併科の対象となるかについて予測可能性を奪うほど不明確であるとは認められない。
結論
所得税法238条2項にいう「情状により」の意義は不明確ではなく、憲法31条に違反しない。
実務上の射程
本判決は、刑罰法規における一般的・抽象的要件の合憲性判断(明確性の原則)に関する一類型を示すものである。司法試験においては、抽象的文言(「正当な理由」「みだりに」等)が罪刑法定主義に反するとの主張を検討する際、本件と同様の論理を用いて、補充的解釈による明確化の可否を論じる際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和37(あ)1557 / 裁判年月日: 昭和38年12月12日 / 結論: 破棄差戻
所得税法第六九条第一項前段の犯罪事実については、逋脱の犯意や逋脱行為にとどまらず、その行為による免脱した所得税額をも認定判示することを要する。