検察官手持証拠について開示命令を発しない旨の処分に対する異議申立却下決定が刑訴法四三三条にいう決定にあたらないとされた事例
刑訴法433条
判旨
検察官手持証拠の開示命令に関する異議申立却下決定のような、訴訟手続に関し判決前にされた決定は、刑訴法433条にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には該当しない。
問題の所在(論点)
検察官手持証拠の開示請求に関する異議申立てを却下した決定に対し、刑訴法433条1項に基づき直接最高裁判所へ特別抗告を申し立てることができるか。同条にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」の意義が問題となる。
規範
刑訴法433条1項に規定する特別抗告の対象である「この法律により不服を申し立てることができない決定」とは、終局的な決定又は本来であれば抗告等により不服申立てが可能であるにもかかわらず、その不服申立てが法律上禁じられている決定を指す。一方、判決前の訴訟手続に関する決定は、原則として判決に対する上訴によってのみ不服を申し立てるべき性質を有するため、同条の対象には含まれない。
重要事実
被告人側が、検察官の手持証拠について開示命令を発するよう求めたところ、裁判所がこれを発しない旨の処分を下した。被告人側はこの処分に対して異議を申し立てたが、裁判所は当該異議申立てを却下する決定(本件決定)を行った。これに対し、被告人側が憲法31条、37条違反および判例違反を理由として、最高裁判所に対し特別抗告を提起した事案である。
あてはめ
本件決定は、証拠開示という「訴訟手続に関し判決前にした決定」に該当する。このような決定は、判決前の付随的な手続に関するものであり、判決に対する上訴手続の中でその当否が争われるべき性質のものである。したがって、独立して不服申立てが禁じられていることを前提とする刑訴法433条の「不服を申し立てることができない決定」としての適格を欠くといえる。
事件番号: 昭和55(し)53 / 裁判年月日: 昭和55年6月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官手持証拠の開示命令をしない旨の決定に対する異議申立を棄却する決定は、刑事訴訟法433条に規定する「この法律により不服を申し立てることができない決定」には該当せず、特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:被告人側が検察官に対し、その手持証拠について証拠開示を求めたが、裁判所が開示命令を…
結論
本件抗告は不適法であり、棄却されるべきである。
実務上の射程
証拠開示命令に関する裁判所の判断は中間的な決定にすぎず、特別抗告の対象とはならないことを示した。答案上は、第1回公判前整理手続後の証拠開示等の文脈で、決定に対する不服申立ての可否(433条の適格性)を論じる際の根拠として活用できる。ただし、現在は刑訴法316条の33等の規定により、公判前整理手続における証拠開示の決定等については即時抗告が認められている点に留意が必要である。
事件番号: 昭和56(し)124 / 裁判年月日: 昭和56年10月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官の手持証拠に対する証拠開示命令を認めない決定は、判決前の訴訟手続に関する決定であり、刑事訴訟法433条1項に規定する「この法律により不服を申し立てることができない決定」には該当しないため、特別抗告の対象とならない。 第1 事案の概要:検察官が手持証拠について開示命令を発しないよう求め、裁判所…
事件番号: 昭和58(し)72 / 裁判年月日: 昭和58年7月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官の手持証拠について開示命令をしない旨の決定は、訴訟手続に関し判決前にした処分に当たり、刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令」には該当しない。 第1 事案の概要:本件は、被告人側が検察官に対し証拠開示を求めたところ、裁判所が当該検察官手持証拠に…
事件番号: 昭和51(し)22 / 裁判年月日: 昭和51年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟手続に関し判決前にした決定に対する異議申立てを棄却する旨の決定は、刑事訴訟法433条にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には当たらない。したがって、かかる決定に対して同条に基づく特別抗告を申し立てることは不適法である。 第1 事案の概要:弁護人は、公判期日において、検察官…
事件番号: 昭和58(し)65 / 裁判年月日: 昭和58年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官手持証拠の開示命令を発しない処分に対する異議申立てを棄却した決定は、刑訴法433条の「この法律により不服を申し立てることができない決定」には該当せず、特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:被告人側が検察官手持証拠の開示を求めたが、裁判所がこれを発しない処分を下した。被告人側はこの処…