刑法二六条の二第二号にいう「其情状重キトキ」の意味が不明確であるといえないとして、同規定の憲法三一条違反をいう諭旨が前提を欠くとされた事例
憲法31条
判旨
刑法26条の2第2号に規定される「其情状重キトキ」という文言は、不明確であるということはできず、憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
刑法26条の2第2号(執行猶予の裁量的取消し)の要件である「其情状重キトキ」という規定が、憲法31条の要求する法内容の明確性に反しないか。
規範
憲法31条が要求する刑罰法規の明確性の原則について、法条の用語が不明確であるかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、何が禁止され、あるいはどのような場合に一定の法的効果(刑罰や刑の執行猶予の取消し等)が生じるかを判断できるかという観点から判断される。
重要事実
執行猶予の言渡しを受けた者が、猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金に処せられた等の事由により、刑法26条の2第2号に基づき執行猶予が取り消された。これに対し弁護人は、同号に定める執行猶予取消事由である「其情状重キトキ」という文言が不明確であり、罪刑法定主義ないし適正手続を定める憲法31条に違反すると主張して特別抗告を申し立てた。
あてはめ
刑法26条の2第2号の規定は、執行猶予期間中に再び犯罪を犯したこと等の事情を考慮し、猶予を維持することが不適当と認められる客観的な状況を指すものと解される。この用語は、刑事法体系における他の「情状」概念と同様に、裁判所の合理的判断に委ねられるべき範囲を示したものであり、通常の理解力を持つ一般人にとって、どのような場合に取消しの対象となり得るかという基準が不明確であるとはいえない。
事件番号: 昭和49(し)55 / 裁判年月日: 昭和49年6月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条の2第2号に基づく執行猶予の取消しは、憲法31条の罪刑法定主義や憲法39条後段の二重処罰の禁止には違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し、刑法26条の2第2号(猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき)に基づき、執行猶予の言…
結論
刑法26条の2第2号の規定は憲法31条に違反しない。したがって、本件抗告は棄却されるべきである。
実務上の射程
裁量規定における文言の明確性が争点となる事案(刑罰法規の明確性の原則)における合憲判断の先例として活用できる。答案上は、法文が抽象的であっても、裁判所の解釈により客観的な判断基準が導き出せる場合には明確性の原則に反しないとする論理の補強に用いる。
事件番号: 昭和51(し)64 / 裁判年月日: 昭和51年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法31条、39条、11条、13条違反を主張してなされた特別抗告について、その実質が単なる法令違反の主張にすぎない場合には、刑訴法433条の抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定等に対し憲法31条(適正手続)、39条(不利益変更の禁止・一事不再理等)、11条(基本的人権の享有…
事件番号: 昭和54(し)27 / 裁判年月日: 昭和54年3月27日 / 結論: その他
刑法二六条一号にいう「禁錮以上ノ刑ニ処セラレ」とは、禁錮以上の刑の言渡をした判決が確定したことをいう。
事件番号: 昭和51(し)50 / 裁判年月日: 昭和51年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予者保護観察法5条1号に規定される「善行」という文言は、刑法26条の2第2号の規定と相まってその意義範囲が明確であり、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:本件は、執行猶予に付され保護観察中の者が、遵守事項に違反したことを理由として執行猶予の取消しを受けた事案である。抗告人は、執行猶予…
事件番号: 昭和46(し)25 / 裁判年月日: 昭和46年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予者保護観察法5条1号にいう「善行」という文言は、刑法26条の2第2号の規定と相まって、その意義範囲が明確であるため、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は執行猶予の言渡しを受け、その期間中、保護観察に付されていた。しかし、執行猶予者保護観察法5条1号に規定される「善行」を保持…