刑法二六条一号にいう「禁錮以上ノ刑ニ処セラレ」とは、禁錮以上の刑の言渡をした判決が確定したことをいう。
刑法二六条一号にいう「禁錮以上ノ刑ニ処セラレ」の意義
刑法26条1号
判旨
刑法26条1号にいう「禁錮以上の刑に処せられ」とは、猶予期間内にさらに罪を犯し、それに対する禁錮以上の刑を言い渡した判決が確定することを指す。未確定の判決に基づき執行力が発生しているのみでは、執行猶予の必要的取消事由には当たらない。
問題の所在(論点)
刑法26条1号の必要的取消事由である「禁錮以上の刑に処せられ」の意義、特に、後刑の判決が確定していないものの、執行力が発生し適法に刑の執行が開始されている場合を含むか。
規範
刑法26条1号の「禁錮以上の刑に処せられ」とは、禁錮以上の刑を言い渡した判決が確定することをいう。したがって、執行猶予の必要的取消しが認められるためには、猶予期間満了前に後刑の判決が確定していることを要する。
重要事実
申立人は前刑の執行猶予期間内に後刑の言渡しを受けたが、これに対し控訴。控訴棄却決定に対する異議申立てが棄却され、告知により後刑の執行力が発生し執行が開始された。しかし、申立人はさらに特別抗告を申し立てており、最高裁判所が同抗告を棄却して後刑判決が確定する前に、前刑の執行猶予期間が満了した。検察官は、執行力が生じていることを理由に執行猶予の取消しを請求した。
事件番号: 昭和54(し)29 / 裁判年月日: 昭和54年3月29日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予言渡取消決定に関する特別抗告の係属中に執行猶予期間に相当する期間が経過したことは、すでに発生している執行猶予取消の効果に影響しない。
あてはめ
刑法26条1号が「処せられ」と規定するのは、有罪判決の確定を前提とする趣旨と解される。本件では、後刑の控訴棄却決定に対する異議申立棄却決定の告知により執行力は発生しているものの、特別抗告の継続により判決自体は確定していない。最高裁が特別抗告を棄却して判決が確定する以前に前刑の執行猶予期間が満了している以上、期間内に「処せられた」とはいえず、同号の取消要件を欠く。執行力の有無は取消事由の判断を左右しない。
結論
刑法26条1号の要件を欠くため、執行猶予の取消しは認められない。後刑の判決確定前に猶予期間が満了した以上、取消決定は違法である。
実務上の射程
執行猶予の必要的取消しに関しては、猶予期間内に後刑が「確定」することが厳格に求められる。実務上、後刑の確定を遅延させる不服申立てがなされた結果、期間が満了した場合には取消しができなくなるという時間的限界を示したものであり、判決の確定時期と期間満了の関係を検討する際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和54(し)76 / 裁判年月日: 昭和54年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条の2第2号に規定される「其情状重キトキ」という文言は、不明確であるということはできず、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:執行猶予の言渡しを受けた者が、猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金に処せられた等の事由により、刑法26条の2第2号に基づき執行猶予が取り消された。これに対し弁護人…
事件番号: 昭和56(し)44 / 裁判年月日: 昭和56年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定が告知された時点で猶予期間が満了していなければ、その後の特別抗告の係属中に猶予期間が経過したとしても、刑法27条による刑の言渡しの失効は生じない。 第1 事案の概要:被告人に対し執行猶予が付された刑の言渡しがあった。その後、執行猶予の取消事由が生じたため、裁判所は…
事件番号: 昭和56(し)113 / 裁判年月日: 昭和56年11月25日 / 結論: その他
一 刑の執行猶予言渡取消決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件において、裁判の執行を停止する場合には、原原決定を対象とすべきである。 二 高裁で言い渡された執行猶予の判決に対する上告申立期間の満了までに五日を残して、被告人の控訴取下により別件につき地裁で言い渡された懲役刑(実刑)の判決の確定したことが地方検察…
事件番号: 昭和59(し)117 / 裁判年月日: 昭和59年12月18日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予の判決確定後に、同判決確定前に犯した他の罪につき禁錮以上の実刑に処する判決が確定したときは、右実刑判決が、未決勾留日数の裁定算入及び法定通算により、現実に刑の執行をなしうる余地がないものであつても、刑法二六条二号に該当する。