刑の執行猶予の判決確定後に、同判決確定前に犯した他の罪につき禁錮以上の実刑に処する判決が確定したときは、右実刑判決が、未決勾留日数の裁定算入及び法定通算により、現実に刑の執行をなしうる余地がないものであつても、刑法二六条二号に該当する。
余罪につき未決勾留日数の裁定算入及び法定通算により現実には刑の執行の余地のない実刑判決が確定した場合と刑法二六条二号
刑法26条2号
判旨
刑法26条2号による執行猶予の必要的取消しは、余罪に対する実刑判決の確定という事実自体をもって、執行猶予を継続するにふさわしくない事由が生じたとするものである。したがって、未決勾留日数の算入等により確定後に現実の刑執行の余地がない場合であっても、同条号の取消事由に該当する。
問題の所在(論点)
刑法26条2号が定める必要的取消事由に関し、余罪に対する実刑判決の確定後、未決勾留日数の算入によって現実に刑の執行をなしうる余地がない場合であっても、なお同条号の取消事由に該当するか。
規範
刑法26条2号は、刑の執行猶予の言渡しを受けた者が猶予の確定前に犯した他の罪(余罪)について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されなかったことを必要的取消事由としている。これは、余罪について実刑判決が確定したという事実それ自体をもって、既に言い渡されている執行猶予を継続するにふさわしくない事由が存在するに至ったと判断する趣旨である。
重要事実
申立人は、刑の執行猶予の判決が確定する前に別の余罪を犯していた。当該余罪について、執行猶予判決の確定後に禁錮以上の実刑に処する判決が確定した。しかし、当該実刑判決においては、本刑に満つるまで未決勾留日数の裁定算入または法定通算が行われていた。その結果、判決確定後に現実に刑を執行する余地が残されていない状態であったことから、刑法26条2号の取消事由に該当するかが争われた。
事件番号: 昭和48(し)7 / 裁判年月日: 昭和48年2月28日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予の判決に対し被告人のみが控訴し、この控訴申立期間経過後で同判決の確定前に、被告人に対する別件被告事件について禁錮刑(実刑)の裁判が確定した場合は、右刑の執行猶予の判決の確定をまつて刑法二六条三号により刑の執行猶予の言渡を取り消すことができる。
あてはめ
刑法26条2号の本質は、実刑判決の確定という客観的事実に基づき、執行猶予の継続が不適当であると画一的に評価する点にある。本件において、余罪について禁錮以上の実刑判決が確定した事実に変わりはない。未決勾留日数の算入により現実の執行余地がないことは、刑の言い渡しそのものの法的性質や確定した事実を左右するものではない。したがって、現実の執行可能性の有無にかかわらず、同条号が定める取消事由を充足すると評価される。
結論
未決勾留日数の算入により現実の刑の執行の余地がない場合であっても、刑法26条2号の必要的取消事由に該当し、執行猶予の言渡しを取り消すべきである。
実務上の射程
執行猶予の必要的取消事由の解釈に関する基礎的な判例である。答案上は、刑法26条各号の適用の場面で、文言上の「実刑判決の確定」があれば足り、その後の現実の執行可能性(未決勾留の算入や刑の時効等)は取消しの効力に影響しないことを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和28(し)97 / 裁判年月日: 昭和29年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条1号による執行猶予の必要的取消しは、一事不再理を定めた憲法39条等の規定に違反せず、合憲である。 第1 事案の概要:被告人は刑の執行猶予期間中にさらに罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられた。これに基づき、刑法26条1号を適用して従前の執行猶予が取り消されたが、被告人は当該取消しが憲法39条に…
事件番号: 昭和56(し)113 / 裁判年月日: 昭和56年11月25日 / 結論: その他
一 刑の執行猶予言渡取消決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件において、裁判の執行を停止する場合には、原原決定を対象とすべきである。 二 高裁で言い渡された執行猶予の判決に対する上告申立期間の満了までに五日を残して、被告人の控訴取下により別件につき地裁で言い渡された懲役刑(実刑)の判決の確定したことが地方検察…
事件番号: 昭和54(し)27 / 裁判年月日: 昭和54年3月27日 / 結論: その他
刑法二六条一号にいう「禁錮以上ノ刑ニ処セラレ」とは、禁錮以上の刑の言渡をした判決が確定したことをいう。
事件番号: 昭和40(し)74 / 裁判年月日: 昭和41年1月28日 / 結論: その他
一 執行猶予の判決に対する検察官の控訴を棄却する旨の判決言渡後確定前に、検察官において、被告人が他の罪について禁錮以上の実刑に処せられた事実を覚知したのにかかわらず、右控訴棄却の判決に対して上告の申立をすることなく、これを確定させたときは、刑法第二六条第三号により右執行猶予を取り消すことはできない。 二 弁護人は、本件…