執行猶予者保護観察法五条一号の「善行」なる文言が不明確でないとして違憲の主張が欠前提とされた事例
憲法31条
判旨
執行猶予者保護観察法5条1号に規定される「善行」という文言は、刑法26条の2第2号の規定と相まってその意義範囲が明確であり、憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
執行猶予者保護観察法5条1号の「善行」という文言が、刑罰法規等の明確性の原則(憲法31条)に照らして、合憲といえるか。
規範
法規範の明確性が憲法31条により要求されるが、その基準は、通常の判断能力を有する一般人の理解において、何が禁止され、または義務付けられているかが予測可能な程度に特定されているか否かによる。特定の用語が抽象的であっても、他の関連規定や法全体の趣旨と照らし合わせてその意義範囲が確定できる場合には、明確性の原則に反しない。
重要事実
本件は、執行猶予に付され保護観察中の者が、遵守事項に違反したことを理由として執行猶予の取消しを受けた事案である。抗告人は、執行猶予者保護観察法5条1号が定める「善行」という文言が不明確であり、憲法31条、11条、14条に違反すると主張して特別抗告を申し立てた。
あてはめ
執行猶予者保護観察法5条1号の「善行」という文言は、単独で解釈するのではなく、執行猶予の取消事由を定める刑法26条の2第2号の「遵守ス可キ事項ヲ遵守セズ其情状重キトキ」という規定と相まって解釈されるべきである。この両規定を連結させて解釈すれば、保護観察付執行猶予者がどのような義務を負い、どのような場合に取消しという不利益を被るかの予測は十分可能である。したがって、その意義範囲は不明確であるとはいえない。
事件番号: 昭和46(し)25 / 裁判年月日: 昭和46年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予者保護観察法5条1号にいう「善行」という文言は、刑法26条の2第2号の規定と相まって、その意義範囲が明確であるため、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は執行猶予の言渡しを受け、その期間中、保護観察に付されていた。しかし、執行猶予者保護観察法5条1号に規定される「善行」を保持…
結論
執行猶予者保護観察法5条1号は憲法31条等に違反せず、合憲である。
実務上の射程
本判決は、刑罰そのものの構成要件ではないが、身分上の不利益(執行猶予取消し)に繋がる規定の明確性について判断したものである。答案上は、憲法31条の明確性の原則の論述において、一見抽象的な文言であっても「他の規定との相関的解釈」により不明確性が解消される具体例として引用できる。
事件番号: 昭和54(し)76 / 裁判年月日: 昭和54年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条の2第2号に規定される「其情状重キトキ」という文言は、不明確であるということはできず、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:執行猶予の言渡しを受けた者が、猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金に処せられた等の事由により、刑法26条の2第2号に基づき執行猶予が取り消された。これに対し弁護人…
事件番号: 昭和52(し)28 / 裁判年月日: 昭和52年4月13日 / 結論: 棄却
一 刑法二六条の二第二号が憲法三九条に違反しないことは、昭和四一年(し)第五九号同四二年三月八日大法廷決定(刑集二一巻二号四二三頁)の趣旨に照らして明らかである。(昭和四九年(し)第一一〇号同年一二月二日第二小法廷決定と同旨) 二 刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審が口頭弁論を開くことなく非公開の裁判をしても憲法三一条に…
事件番号: 昭和51(し)127 / 裁判年月日: 昭和51年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条3号による執行猶予の取消しは、憲法39条の「二重の処罰(二重処罰の禁止)」に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人は、執行猶予の言渡しを受けた後、その猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金に処せられた。これに基づき、刑法26条3号を適用して執行猶予の取消しがなされた。抗告人は、この取消しが憲法…
事件番号: 昭和51(し)64 / 裁判年月日: 昭和51年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法31条、39条、11条、13条違反を主張してなされた特別抗告について、その実質が単なる法令違反の主張にすぎない場合には、刑訴法433条の抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定等に対し憲法31条(適正手続)、39条(不利益変更の禁止・一事不再理等)、11条(基本的人権の享有…