決定裁判所を構成する裁判官の表示を欠く決定謄本は、刑訴規則五七条一項に違反するが、右のような謄本であつても、裁判を受ける者の氏名、決定の主文、その理由及び決定裁判所が東京高裁第六刑事部であることが明示されており、決定の名宛人において、右決定が自己がさきに抗告をした東京高等裁判所の第六刑事部においてなされたものであることを知り、さらに右決定の内容を了知し、これに対して不服申立をするかどうかの判断をするに足りる事項は含んでいるから、これを送達してした決定の告知は無効とはいえない。
決定裁判所を構成する裁判官の表示を欠く決定謄本の送達による決定告知の効力
刑訴法46条,刑訴規則34条,刑訴規則57条1項
判旨
裁判官の表示を欠く決定謄本の送達による告知であっても、名宛人が決定の内容や発信裁判所を了知でき、不服申立ての判断に足りる事項が含まれている場合は、告知として無効ではない。
問題の所在(論点)
裁判官の表示を欠く不完全な決定謄本の送達によってなされた裁判の告知が、刑事訴訟規則上の形式違反により無効となるか。
規範
決定謄本の送達による告知において、一部の形式的事項(裁判官の表示等)に欠落があっても、①名宛人において決定をした裁判所および決定の内容を了知でき、②これに対して不服申立てをするかどうかの判断をするに足りる事項が含まれており、かつ③原本に瑕疵がない場合には、当該送達による告知はなお有効である。
重要事実
申立人が在監する刑務所長宛に送達された原決定の謄本には、原本の2枚目(裁判官3名の表示部分)が欠落し、1枚目が重複して綴じられるという刑訴規則57条1項違反の不備があった。しかし、当該謄本には、被告人の氏名、主文、理由、および決定裁判所が東京高等裁判所第六刑事部であることは明示されていた。また、決定原本には裁判官3名の記名押印が適法に存在していた。
事件番号: 昭和56(し)44 / 裁判年月日: 昭和56年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定が告知された時点で猶予期間が満了していなければ、その後の特別抗告の係属中に猶予期間が経過したとしても、刑法27条による刑の言渡しの失効は生じない。 第1 事案の概要:被告人に対し執行猶予が付された刑の言渡しがあった。その後、執行猶予の取消事由が生じたため、裁判所は…
あてはめ
本件謄本には裁判官の氏名表示はないものの、決定裁判所が「東京高等裁判所第六刑事部」であることは明白であり、申立人が自ら抗告した裁判所による判断であることを知り得る状態にあった。また、主文及び理由も記載されており、不服申立ての要否を判断するに十分な情報を備えていたといえる。原本には裁判官の記名押印が存在し、裁判成立の真正さも担保されている。したがって、形式上の不備はあるものの、告知の目的は実質的に達成されていると評価できる。
結論
本件謄本の送達による決定の告知は、刑訴規則違反の点があるとしても、無効とはいえない。
実務上の射程
手続の瑕疵と行為の有効性を判断する際の「実質的利益」の観点を示す。答案上は、訴訟手続の形式的違背が問題となる場面で、その瑕疵が当事者の防御権(不服申立ての機会)を実質的に侵害していない場合に、手続の有効性を維持する論拠として援用できる。
事件番号: 昭和54(し)29 / 裁判年月日: 昭和54年3月29日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予言渡取消決定に関する特別抗告の係属中に執行猶予期間に相当する期間が経過したことは、すでに発生している執行猶予取消の効果に影響しない。
事件番号: 昭和50(し)65 / 裁判年月日: 昭和50年9月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予取消の決定が猶予期間経過前に本人に告知されれば、その時点で取消の効力が生じる。たとえその後の不服申立期間中に猶予期間が経過したとしても、決定の効力に影響を及ぼすものではない。 第1 事案の概要:申立人に対し執行猶予の取消決定がなされ、その決定は執行猶予期間が経過する前に申立人に告知された。…
事件番号: 昭和56(し)56 / 裁判年月日: 昭和56年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予取消決定に対する特別抗告の係属中に猶予期間が満了した場合であっても、決定告知時に期間が満了していなければ、決定の効力は失われず、抗告審は裁判を継続できる。 第1 事案の概要:本件において、原裁判所による執行猶予取消決定の告知が行われたのは昭和56年4月7日であり、この時点では執行猶予期間は…
事件番号: 平成3(し)59 / 裁判年月日: 平成3年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法54条により準用される民事訴訟法上の付郵便送達の方法は、刑事手続における裁判書の送達についても適法に認められる。送達が適法になされた場合、その翌日から起算して特別抗告の提起期間を徒過した申立ては不適法として棄却される。 第1 事案の概要:本件において、原決定(下級審の決定)の謄本は、平成…