法定刑超過による非常上告
刑訴法458条1号,道交法65条1項,道交法119条1項,道交法7条の2
判旨
確定した略式命令が、加重事由がないにもかかわらず法定刑の上限を超える罰金を科していた場合、法令違反かつ被告人の不利益になるため、非常上告に基づき破棄・自判される。
問題の所在(論点)
法定刑の上限を上回る罰金を科した確定略式命令について、刑訴法454条以下の非常上告の手続きにおいて、法令違反および被告人の不利益を理由に破棄・自判ができるか。
規範
確定判決(略式命令を含む)において、実刑の言い渡しが当該事案に適用されるべき法定刑の範囲を超えている場合、それは法令に違反し、かつ被告人のために不利益であるといえる。この場合、刑訴法458条1号但書により、原判決を破棄し、自ら判決(自判)を下すべきである。
重要事実
被告人は道路交通法違反(酒気帯び運転)により略式起訴された。徳島簡易裁判所は、昭和53年3月に被告人を罰金5万円に処する略式命令を発付し、同年4月に確定した。しかし、当時の道路交通法65条1項、119条1項7号の2が定める罰金の法定刑上限は3万円であった。本件には法定刑を加重すべき事由は存在しなかった。
あてはめ
道路交通法違反の罪に対する罰金の法定刑は3万円以下である。本件被告人に対し、加重事由がないにもかかわらず罰金5万円を科した原略式命令は、形式的に法定刑の枠外の刑を選択しており、明白な法令違反がある。また、正当な刑の上限である3万円を超過する2万円分の金銭的負担を被告人に強いるものであるから、被告人にとって不利益であることは明らかである。
結論
原略式命令を破棄する。被告人を罰金3万円に処し、完納不能時の労役場留置を命ずる。
実務上の射程
非常上告の事案であり、実務上は「法令の適用に誤りがあり、かつ被告人に不利益な確定判決」の典型例として位置づけられる。答案上は、罪刑法定主義(刑罰の明確性・法的根拠)の観点や、誤った裁判の是正手段を論じる際の具体例として活用できる。
事件番号: 昭和54(さ)5 / 裁判年月日: 昭和54年10月23日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】法定刑の上限を超える罰金額を科した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人の不利益になることが明らかであるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は酒気帯び運転の事実により道路交通法違反で略式起訴された。徳山簡易裁判所は、法定刑の上限が「3万円以下の罰金」であった当時にお…
事件番号: 平成9(さ)2 / 裁判年月日: 平成9年4月14日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】略式命令において法定刑の上限を超える罰金刑を科したことは、法令に違反し、かつ被告人に不利益な裁判であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は酒気帯び状態で普通乗用自動車を運転した。釧路簡易裁判所は、道路交通法違反(酒気帯び運転)の事実を認定し、被告人を罰金7万円に…