一 死刑と残虐な刑罰 二 死刑の原判決が維持された事例
憲法36条
判旨
死刑は憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。また、犯行の動機、態様、結果等の諸事情を考慮し、被告人の刑責が極めて重い場合には、死刑の選択もやむを得ないものとして是認される。
問題の所在(論点)
死刑制度が憲法36条の「残虐な刑罰」に該当し違憲ではないか。また、強姦致傷および殺人等の罪を犯した被告人に対し、死刑を適用することが量刑上不当ではないか。
規範
死刑が憲法36条にいう「残虐な刑罰」にあたらないことは判例の確立した見解である。量刑の妥当性については、犯行の動機、態様、罪質、結果等の犯情に加え、被告人の前科等の一般情状を総合的に考慮し、その刑責が極めて重く、やむを得ないといえる場合には死刑を選択することができる。
重要事実
被告人は、宿泊先の民宿の若妻を深夜に襲い、置時計で殴打して失神させた後、2回にわたり強姦した。さらに、口封じ等のためにこたつ用電気コードで頸部を緊縛し、当該女性および生後2か月の長女を相次いで殺害した。被告人には本件と同種または類似の非行歴や前科が存在していた。
あてはめ
本件犯行は、深夜に寝室を襲い、凶器を用いて抵抗不能にした上で姦淫し、さらに無抵抗な母子を電気コードで絞殺するという、極めて残忍・非道な態様である。また、生後2か月の乳児を含む2名の命を奪った結果は極めて重大である。加えて、被告人には同種・類似の前科等があり、再犯の可能性や反社会的傾向も認められる。これらの事情を総合すれば、被告人の刑責は誠に重いといえる。
事件番号: 昭和54(あ)912 / 裁判年月日: 平成2年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条に違反せず、本件のごとき重大な刑責を負う事案においては死刑の選択はやむをえないものとして是認される。 第1 事案の概要:被告人は約2年の間に3回にわたり、夜間帰宅途中の婦女を襲って強姦した。その際、当時19歳の女性2名を殺害し、うち1名の死体を山林に遺棄した。弁護人は、死刑制度…
結論
死刑は憲法36条に違反しない。本件の犯行態様の残虐性や結果の重大性に鑑みれば、一審および控訴審が維持した死刑判決は、やむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
死刑の合憲性を前提としつつ、具体的な死刑適用の判断枠組み(いわゆる永山基準の前段階的な考慮要素)を示すものである。答案上では、憲法36条の論証において判例の立場として引用するほか、刑法の量刑論において犯情(動機・態様・結果)と一般情状(前科)をいかに評価すべきかの指針となる。
事件番号: 昭和44(あ)1212 / 裁判年月日: 昭和45年3月26日 / 結論: 棄却
検察官が控訴を申し立て第一審判決の刑より重い刑の判決を求めることが憲法三九条に違反しないことは、昭和二四年新(れ)第二二号同二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)の判示するとおりであり、検察官が死刑の判決を求める場合もその例外とは解されない。
事件番号: 昭和54(あ)1736 / 裁判年月日: 昭和56年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】絞首による死刑は憲法36条が禁止する残虐な刑罰に該当せず、また、犯行の動機、態様、罪質、結果の重大性及び前科等の事情を総合考慮し、死刑の適用がやむを得ない場合はこれを是認できる。 第1 事案の概要:被告人は、一人住まいの高齢女性の善意を裏切り、同女を強姦した上、角材で頭部や顔面等を強く乱打して撲殺…
事件番号: 昭和58(あ)581 / 裁判年月日: 平成2年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の態様、動機、殺害方法の執拗性・残虐性、被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科、犯行後の情状等、一切の事情を総合的に考慮し、その罪責が極めて重いと認められる場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、農作業中の主婦を強姦目的で襲い、抵抗されたため頸部を強…