迅速な裁判の保障条項に反するとの主張が欠前提とされた事例
憲法37条1項
判旨
刑事裁判の審理に長期間を要した場合であっても、その原因の大半が被告人の病気にあるときは、憲法37条1項が保障する迅速な裁判を受ける権利を侵害するような遅延の存在は認められない。
問題の所在(論点)
審理が長期間に及んだ場合において、その原因が被告人の病気にあるとき、憲法37条1項にいう迅速な裁判を受ける権利を侵害する不当な遅延に該当するか。
規範
憲法37条1項の保障する「迅速な裁判」を受ける権利が侵害されたというためには、審理の遅延が不当に長期間にわたり、かつその遅延について被告人の責めに帰すべき事由がないことが必要である。審理の遅延が、専ら又は主として被告人の個人的事情に起因する場合には、同条項に違反する不当な遅延とは認められない。
重要事実
被告人の刑事事件において、その審理が長期間にわたって継続された。弁護人は、この長期間の審理が被告人の迅速な裁判を受ける権利を侵害するものであるとして上告を申し立てた。しかし、記録によれば、審理に長期間を要した原因の大部分は被告人自身の病気にあった。
あてはめ
本件における審理の長期化について検討するに、記録上、審理に時間を要した原因の大半は被告人の病気によるものであることが明らかである。このように、遅延の主たる要因が被告人側の事情(健康状態)にある場合、国家機関による不当な怠慢や訴訟追行の不備によって生じた遅延とはいえない。したがって、迅速な裁判の保障条項に反するような権利侵害の事実は認められないと解される。
事件番号: 昭和51(あ)392 / 裁判年月日: 昭和51年6月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白に対する補強証拠の存否、裁判官の不公平性、及び調書の同意手続の適法性が争われたが、いずれも前提を欠くか単なる法令違反・事実誤認の主張に過ぎないとして上告を棄却した。 第1 事案の概要:上告人は、第一審判決における自白の補強証拠の不足、第一審裁判官の不公平、および調書に対する同意手続の瑕疵等を理…
結論
被告人の病気が原因で審理が長期間を要したとしても、憲法37条1項に違反するような遅延の存在は認められず、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
高田事件判決(最大判昭47.12.20)が示した迅速な裁判の保障の射程を確認する事例である。答案上では、審理遅延の理由を分析する際、「被告人側の事情」の有無を確認し、病気等の被告人帰責事由が主要因である場合には違憲性を否定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和43(あ)2538 / 裁判年月日: 昭和44年6月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】併合罪として1つの判決で言い渡された複数の罪につき、被告人が一部の罪についてのみ控訴し、検察官も控訴しなかった場合、控訴されなかった罪の部分は控訴期間経過により確定し、控訴審の審判対象から除外される。 第1 事案の概要:被告人は第一審において、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反、賭博開張…
事件番号: 昭和41(あ)2269 / 裁判年月日: 昭和42年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑の判断において、犯行の罪質、動機、態様等の諸要素を総合的に考慮した結果であれば、特定の組織に所属していた事実が考慮されたとしても、直ちに憲法14条の法の下の平等に反する差別的待遇には当たらない。 第1 事案の概要:被告人両名は、かつて「A」または「B」という組織に加入していた経歴を有していた。…
事件番号: 昭和55(あ)1181 / 裁判年月日: 昭和56年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】火炎びんの使用等の処罰に関する法律(火炎びん処罰法)は、規制対象行為の危険性に照らし立法根拠が認められ、差別的立法ではなく、構成要件も明確であるため、憲法13条、14条、19条、21条1項、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反等で起訴された。こ…
事件番号: 昭和26(あ)750 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、裁判官が偏頗な疑いがない客観的な組織・構成を備えていることを指し、当事者の主観的な不満を基準にするものではない。 第1 事案の概要:被告人A、Bらは、その行為が占領軍政策実施に協力する適法行為であると主張したが認められなかった。また、量刑等の判断や裁判…