司法警察員による建物差押処分を取り消す旨の準抗告決定に対する特別抗告の決定中に、「なお、所論にかんがみ職権により調査するもいまだ刑訴法四一一条を適用すべきものとまでは認められない。」との判示が付加された事例―いわゆる成田・横堀要塞差押事件―
刑訴法430条2項,刑訴法411条
判旨
被告人の承諾なく身体内に強制的に下剤を注入して排便を促す処置は、捜索・差押の付随処分として許容される限度を超え、原則として身体検査令状によるべきである。
問題の所在(論点)
令状に基づく捜索・差押の際、証拠物を体外に排出させるために、被告人の意思に反して下剤を強制注入する行為が、捜索・差押令状の付随処分として許容されるか。また、その適法性の限界が問題となる。
規範
捜索・差押の際に、目的物の存在が高度に蓋然的であり、かつその押収が不可欠であっても、身体の安全や人道上の配慮を要する態様での強制的な身体への侵襲を伴う行為については、捜索・差押令状の付随処分(刑訴法222条1項、111条1項)として行うことはできず、身体検査令状(同法218条1項)によるべきである。また、その実施に際しては、医師が医学的に相当と認める方法で行われる必要がある。
重要事実
被告人が覚せい剤を飲み込んだ疑いがあるとして、警察官が捜索・差押令状に基づき被告人を拘束した。医師に依頼し、被告人の意思に反して胃洗浄用のカテーテルを挿入し、強制的に下剤を注入して排便を促した。その結果、排出物中から覚せい剤が発見され、これが押収された。原決定はこの強制的な排便措置を違法と判断し、証拠能力を否定した。
あてはめ
本件における下剤の強制注入は、鼻からカテーテルを胃に挿入するという身体への直接的な侵襲を伴うものである。このような措置は、単なる捜索・差押に付随する「必要な処分」の範囲を超えており、個人の尊厳や身体の安全を著しく害するおそれがある。医師によって行われたとしても、身体検査令状の発付を受けず、捜索・差押令状のみで行うことは手続的に不十分であるといえる。したがって、本件処分は重大な違法を帯びる。
事件番号: 昭和52(し)65 / 裁判年月日: 昭和52年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】捜索差押の実施にあたり、その経過を明らかにする目的で行われる現場の写真撮影は、適法な捜査活動として認められる。 第1 事案の概要:軽犯罪法違反の嫌疑に基づく捜索差押令状の執行において、捜査機関がその執行経過を記録する目的で現場の状況を写真撮影した。これに対し、申立人らが当該撮影は憲法等に違反する違…
結論
被告人の承諾がない強制的な下剤注入による排便措置は、身体検査令状によらずになされた点において違法であり、これにより得られた証拠の証拠能力は否定されるべきである。
実務上の射程
捜査機関が身体内部にある証拠物を強制的に採取する場合の指針となる。尿の強制採取(強制採尿)において、医師が医学的に相当な方法で行うことや身体検査令状を求める実務上の運用の基礎となった判例であり、強制処分法定主義の観点から重要である。
事件番号: 昭和43(し)101 / 裁判年月日: 昭和44年3月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法430条に基づく不服申立てを受けた裁判所は、差押えの必要性の有無についても審査することができる。差押えの必要性は、犯罪の態様や証拠としての価値、被差押者の不利益等を総合考慮し、明らかに必要がないと認められる場合には否定される。 第1 事案の概要:検察官等が行った差押処分に対し、刑事訴訟法…
事件番号: 平成2(し)9 / 裁判年月日: 平成2年6月27日 / 結論: 棄却
司法警察員が申立人方居室内で捜索差押をするに際し捜索差押許可状記載の「差し押えるべき物」に該当しない印鑑、ポケット・ティッシュペーパー等について写真を撮影した場合において、右の写真撮影は、「押収に関する処分」には当たらず、その撮影によって得られたネガ及び写真の廃棄又は申立人への引渡を求める準抗告は、不適法である。
事件番号: 昭和54(し)31 / 裁判年月日: 昭和54年4月3日 / 結論: 棄却
刑訴法四三〇条二項にいう「職務執行地」とは、不服のある処分の行われた地をいう。
事件番号: 昭和43(し)100 / 裁判年月日: 昭和44年3月18日 / 結論: 棄却
一 検察官等のした差押に関する処分に対して、刑訴法四三〇条の規定により不服の申立を受けた裁判所は、差押の必要性の有無についても審査することができる。 二 司法警察職員は、事件を検察官に送致した後においては、当該事件につき司法警察職員がした押収に関する処分を取り消しまたは変更する裁判に対して抗告を申し立てることができない…