司法警察員が申立人方居室内で捜索差押をするに際し捜索差押許可状記載の「差し押えるべき物」に該当しない印鑑、ポケット・ティッシュペーパー等について写真を撮影した場合において、右の写真撮影は、「押収に関する処分」には当たらず、その撮影によって得られたネガ及び写真の廃棄又は申立人への引渡を求める準抗告は、不適法である。
司法警察員が捜索差押の際にした写真撮影によって得られたネガ及び写真の廃棄又は引渡を求める準抗告が不適法とされた事例
刑訴法218条1項,刑訴法430条1項,刑訴法430条2項
判旨
捜索差押許可状に基づき執行現場で行われた写真撮影は、原則として検証としての性質を有し、刑事訴訟法430条2項にいう「押収に関する処分」には当たらない。したがって、撮影された写真等の廃棄を求める準抗告を申し立てることは不適法である。
問題の所在(論点)
捜索差押の際に行われた「差し押さえるべき物」以外の物件に対する写真撮影が、刑事訴訟法430条2項の準抗告の対象である「押収に関する処分」に該当するか。
規範
1. 捜索差押の現場における写真撮影は、五感の作用によって物の存在や形状を認識・記録する行為であり、原則として「検証」としての性質を有する。 2. 刑事訴訟法430条2項が準抗告の対象とするのは「押収に関する処分」に限定されており、検証の性質を有する処分は同条の対象に含まれない。
重要事実
司法警察員が裁判官の発付した捜索差押許可状に基づき、申立人方で捜索差押を執行した。その際、警察員は許可状記載の「差し押さえるべき物」に該当しない印鑑、ポケット・ティッシュ、電動ひげそり機、背広の計4点について写真を撮影した。これに対し、申立人は右撮影が違法であるとして、撮影によって得られたネガ及び写真の廃棄等を求めて準抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和52(し)65 / 裁判年月日: 昭和52年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】捜索差押の実施にあたり、その経過を明らかにする目的で行われる現場の写真撮影は、適法な捜査活動として認められる。 第1 事案の概要:軽犯罪法違反の嫌疑に基づく捜索差押令状の執行において、捜査機関がその執行経過を記録する目的で現場の状況を写真撮影した。これに対し、申立人らが当該撮影は憲法等に違反する違…
あてはめ
本件で行われた写真撮影は、対象物の存在や形状をフィルムに収録する行為であり、その実質は「検証」に当たる。検証は、物の占有を強制的に取得する「押収」とは異なる性質の処分である。本件の撮影対象は印鑑等の外形にとどまっており、日記帳やメモの内容を逐一撮影してその情報を取得するような、実質的に「押収」と評価すべき特段の事情(補足意見参照)も認められない。したがって、本件撮影は検証の域を出るものではなく、「押収に関する処分」には当たらないといえる。
結論
本件写真撮影は「押収に関する処分」に当たらないため、これに対する準抗告は不適法として棄却される。
実務上の射程
捜査機関による写真撮影に対する救済手段を問う問題(特に準抗告の適格)で活用する。本判決は検証への準抗告を否定するが、補足意見が示す「文書内容の撮影等、実質的に占有取得と同視できる場合」には、例外的に430条の対象となる余地がある点に留意が必要である。また、撮影自体の適法性については、捜索差押に付随する範囲(執行状況の記録等)であれば許可状の効力内だが、無関係な物の撮影には原則として検証許可状が必要となる。
事件番号: 平成2(し)74 / 裁判年月日: 平成2年7月9日 / 結論: 棄却
報道機関の取材ビデオテープが軽視できない悪質な被疑事件の全容を解明する上で重要な証拠価値を持ち、他方、右テープが被疑者らの協力によりその犯行場面等を撮影収録したものであり、右テープを編集したものが放映済みであって、被疑者らにおいてその放映を了承していたなど判示の事実関係の下においては、右テープに対する捜査機関の差押処分…
事件番号: 昭和35(し)5 / 裁判年月日: 昭和35年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請願権の行使を目的とする行為であっても、管理者の意思に反して国会構内に立ち入る行為は建造物侵入罪を構成し、正当な請願行為とは認められない。 第1 事案の概要:被疑者Aは、日米安全保障条約改定阻止を目的とする請願運動に際し、他の者と共謀の上、国会構内の管理者の意思に反して同構内に立ち入った。これに対…
事件番号: 平成8(し)50 / 裁判年月日: 平成8年9月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法82条の解釈の誤り、判例違反、および法令違反・事実誤認を理由とする抗告に関し、原決定に憲法解釈の誤りはなく、適法な抗告理由に当たらないと判断した。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して憲法82条(裁判の公開)の解釈の誤り、判例違反、ならびに法令違反および事実誤認を主張して特別抗告を申し立…
事件番号: 昭和53(し)44 / 裁判年月日: 昭和53年7月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の承諾なく身体内に強制的に下剤を注入して排便を促す処置は、捜索・差押の付随処分として許容される限度を超え、原則として身体検査令状によるべきである。 第1 事案の概要:被告人が覚せい剤を飲み込んだ疑いがあるとして、警察官が捜索・差押令状に基づき被告人を拘束した。医師に依頼し、被告人の意思に反し…