爆発物取締罰則が法律としての効力を保有することはきわめて明らかであるとして、違憲の主張が不適法とされた事例
憲法31条,憲法73条,憲法98条
判旨
爆発物取締罰則は現行憲法下でも効力を有し、同法2条の「治安ヲ妨ケ」という要件は明確性の原則に反せず、かつ同条は思想・信条を処罰するものではないため憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 爆発物取締罰則は、現行憲法下において法律としての効力を有するか。 2. 同罰則2条の構成要件である「治安ヲ妨ケ」という概念は、明確性の原則に照らして合憲か。 3. 同条は、思想・信条を処罰の対象とするものではないか。
規範
1. 法令が定める犯罪構成要件が明確性の原則(憲法31条)に反するか否かは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、何が禁止されているかが把握できるかによって判断される。 2. 刑罰の加重や法定刑の選択は、広範な立法政策の裁量に委ねられており、著しく不合理でない限り憲法に適合する。
重要事実
被告人は爆発物取締罰則違反等の罪で起訴された。弁護人側は、同罰則が明治時代に制定された太政官布告であり現行憲法下で効力を有しないこと、また同罰則2条の「治安ヲ妨ケ」という要件が不明確であり、かつ思想・信条を処罰の対象とするものであるとして、憲法31条(適正手続・明確性の原則)、19条(思想良心の自由)等に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 爆発物取締罰則が現行憲法施行後も法律としての効力を保有することは、当裁判所の累次の判例(昭和24年大法廷判決等)により確立しており、形式的に無効とはいえない。 2. 「治安ヲ妨ケ」という概念は、爆発物の危険性や公共の安全という文脈から読み取ることが可能であり、不明確なものとはいえない。 3. 同条は、特定の目的で爆発物を使用しようとする具体的な「行為」を処罰するものであり、内心の思想・信条そのものを問うものではない。また、法定刑の定めも立法政策の範囲内であるといえる。
結論
爆発物取締罰則は現行憲法に違反せず、有効である。したがって、被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、爆発物取締罰則の合憲性を再確認したものである。答案上は、明治期の法令(太政官布告等)の有効性や、抽象的な構成要件(治安を妨げる等)が明確性の原則に反するか否かが問われた際、本判例を引用して合憲と論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和53(あ)800 / 裁判年月日: 昭和53年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則は憲法施行後も法律としての効力を有し、その1条が定める構成要件は明確であり、法定刑の重さも立法政策の範囲内で憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人両名は、爆発物取締罰則違反等の罪で起訴された。弁護人は、同罰則が明治17年の太政官布告であり憲法上の「法律」にあたらないこと、1条の…