爆発物取締罰則の規定違憲(三一条、七三条、九八条、三六条、一九条違反)の主張が欠前提とされた事例
憲法31条,憲法73条,憲法98条,憲法36条,憲法19条
判旨
爆発物取締罰則は憲法施行後も法律としての効力を有し、その1条が定める構成要件は明確であり、法定刑の重さも立法政策の範囲内で憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 爆発物取締罰則は憲法施行後も法律としての効力を有するか。 2. 同罰則1条の法定刑は罪刑均衡に反し憲法31条、36条に違反するか。 3. 同罰則1条の構成要件は明確性の原則(憲法31条)に反するか。
規範
1. 太政官布告であっても、実質的に法律の性質を有するものは新憲法施行後も法律としての効力を保有する。 2. 刑罰の定めが憲法31条、36条に違反するか否かは、その刑罰が残虐であるか、あるいは罪刑が著しく均衡を失い立法政策の限界を逸脱しているかにより判断される。 3. 構成要件の明確性は、通常の判断能力を有する者の理解を基準に、濫用の危険がないかにより判断される。
重要事実
被告人両名は、爆発物取締罰則違反等の罪で起訴された。弁護人は、同罰則が明治17年の太政官布告であり憲法上の「法律」にあたらないこと、1条の法定刑(死刑または無期若しくは7年以上の懲役・禁錮)が重すぎ罪刑均衡に反すること、構成要件があいまいで不明確であること等を理由に、憲法31条、36条等に違反し無効であると主張して上告した。
あてはめ
1. 同罰則が法律としての効力を保有することは当裁判所の判例により確立しており、憲法31条、73条6号、98条に違反しない。 2. 1条所定の刑は残虐な刑罰とはいえず、爆発物使用という重大な法益侵害行為に対し当該法定刑を定めることは立法政策の問題である。本件法定刑が異常に重く罪刑の均衡を失しているとは認められない。 3. 1条は「治安を妨げ又は人の身体財産を害する目的」で爆発物を使用した者を処罰するものであり、その構成要件は明確である。思想・信条自体を処罰する趣旨ではなく、濫用を誘発する規定ともいえない。
結論
爆発物取締罰則1条は憲法31条、36条、19条等に違反せず、有効である。したがって、被告人らの上告は棄却される。
実務上の射程
太政官布告の法律的効力を肯定する形式的妥当性と、重い法定刑に関する立法裁量を広く認める実質的妥当性の両面で重要。答案上は、罪刑法定主義(明確性の原則)や罪刑均衡の議論において、公共の安全を害する重大犯罪に対する厳しい法定刑を肯定する根拠として引用できる。
事件番号: 昭和53(あ)423 / 裁判年月日: 昭和53年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則は憲法施行後も法律としての効力を有し、その法定刑や構成要件は憲法31条、36条、14条、19条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人両名が、爆発物取締罰則3条(所定の目的での爆発物等の製造・輸入・所持・注文)に該当する行為を行ったとして起訴された事案。被告人側は、同罰則が明治憲法…