爆発物取締罰則一条の規定違憲(三一条違反)の主張が立法政策の問題であつて憲法適否問題ではないとして処理された事例
憲法31条
判旨
爆発物取締罰則1条の「治安ヲ妨ケ」るという概念は憲法31条が要求する明確性の原則に反せず、同条が定める法定刑の重さは立法政策の問題として許容される。
問題の所在(論点)
1. 明治17年太政官布告である爆発物取締罰則が、現行憲法下でも法律としての効力を有するか。 2. 同罰則1条の「治安ヲ妨ケ」という要件は、憲法31条の明確性の原則に違反しないか。 3. 同条が規定する一律に重い法定刑は、憲法31条に違反しないか。
規範
1. 法律の規定が憲法31条の適正手続(罪刑法定主義)に反するか否かは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、何が禁止されているかが明確に判別できるか、及びその刑罰が合理性を欠くほど過重でないかにより判断される。 2. 具体的な構成要件の不明確性については、社会通念上の概念として確定しうる場合は合憲とされる。 3. 法定刑の均衡については、立法府の裁量に属する立法政策の問題であり、著しく不合理でない限り憲法違反とはならない。
重要事実
被告人が爆発物取締罰則違反の罪で起訴された事案において、弁護人は同罰則が明治年間に制定された太政官布告であり、現憲法下での効力を失っていると主張した。また、1条に規定される「治安ヲ妨ケ」るという要件が不明確であり、かつ、その法定刑(死刑、無期もしくは7年以上の懲役または禁錮)が重すぎ、憲法31条、98条1項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 爆発物取締罰則は、現行憲法施行後の今日においてもなお法律としての効力を保有している(判例の維持)。 2. 「治安ヲ妨ケ」るという概念は、爆発物使用による危険から社会の平穏を保護するという趣旨から照らせば、通常の判断能力を有する者にとって不明確なものとはいえない。 3. 本条が処罰の対象とする各行為について等しく重い法定刑を課すことは、爆発物の危険性に鑑みた立法政策の問題であり、憲法に抵触するほど不合理なものとは解されない。
結論
本件上告を棄却する。爆発物取締罰則1条は、明確性の原則および刑罰の均衡の観点から憲法31条に違反せず、有効な法律として適用される。
実務上の射程
法令の合憲性(特に罪刑法定主義)が争われる問題において、「明治期の太政官布告の有効性」「構成要件の明確性」「法定刑の裁量」の3点を肯定する根拠として用いる。特に明確性の原則については、抽象的な用語であっても趣旨や社会通念から解釈可能であれば足りるという判断枠組みを補強する。
事件番号: 昭和59(あ)336 / 裁判年月日: 昭和60年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則は現行憲法下でも有効であり、その目的規定は明確性の原則に反せず、思想・信条自体を処罰するものでもないため、憲法31条及び19条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、爆発物取締罰則違反の罪で起訴された事案である。弁護人は、同罰則が明治24年に制定された古い太政官布告を承継したもの…
事件番号: 昭和53(あ)800 / 裁判年月日: 昭和53年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則は憲法施行後も法律としての効力を有し、その1条が定める構成要件は明確であり、法定刑の重さも立法政策の範囲内で憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人両名は、爆発物取締罰則違反等の罪で起訴された。弁護人は、同罰則が明治17年の太政官布告であり憲法上の「法律」にあたらないこと、1条の…