爆発物取締罰則一条の規定違憲(憲法一九条違反)の主張が欠前提とされた事例
憲法19条
判旨
爆発物取締罰則は憲法施行後も法律として効力を有し、その1条が定める「治安ヲ妨ケ」の概念は憲法31条にいう明確性の原則に反せず、同条の法定刑も憲法36条の残虐な刑罰には当たらない。
問題の所在(論点)
1.明治17年太政官布告である爆発物取締罰則が現行憲法下で法律としての効力を有するか。2.同1条にいう「治安ヲ妨ケ」という要件が憲法31条の明確性の原則に違反しないか。3.同条の法定刑が憲法36条に違反するか。
規範
刑罰法規が憲法31条に適合するためには、その規定する犯罪構成要件の概念が、通常の判断能力を有する一般人の理解において明確でなければならない。また、特定の行為に対してどのような法定刑を科すかは、立法府の広範な裁量に委ねられた立法政策の問題であり、著しく不合理なものでない限り憲法36条には違反しない。
重要事実
被告人は、所定の目的で爆発物を使用したとして爆発物取締罰則1条違反の罪に問われた。これに対し、被告人側は、同罰則が明治時代の太政官布告であって法律としての効力を有しないこと、同条の「治安ヲ妨ケ」という概念が不明確であること、およびその法定刑(死刑又は無期若しくは7年以上の懲役又は禁錮)が残虐な刑罰に当たり違憲であること等を主張して上告した。
あてはめ
まず、爆発物取締罰則は、憲法施行後も法律としての効力を保有する(判例)。次に、同1条の「治安ヲ妨ケ」という概念については、爆発物使用という具体的態様からその危険性は明らかであり、概念として不明確であるとはいえない。さらに、爆発物使用による危害の重大性に鑑みれば、同条に死刑等を含む法定刑を定めることは立法政策の範囲内であり、人道上の見地から著しく不自然かつ過酷な「残虐な刑罰」には当たらないと解される。
結論
爆発物取締罰則1条は憲法14条、19条、31条、36条、73条、98条のいずれにも違反せず、合憲である。
実務上の射程
太政官布告の法律的効力を肯定した基本判例である。答案上は、罪刑法定主義(明確性の原則)の議論において、抽象的な文言であっても判例がその明確性を肯定した一例として参照できる。また、法定刑の合憲性については立法裁量を尊重する判例の立場を補強する材料となる。
事件番号: 昭和53(あ)800 / 裁判年月日: 昭和53年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則は憲法施行後も法律としての効力を有し、その1条が定める構成要件は明確であり、法定刑の重さも立法政策の範囲内で憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人両名は、爆発物取締罰則違反等の罪で起訴された。弁護人は、同罰則が明治17年の太政官布告であり憲法上の「法律」にあたらないこと、1条の…
事件番号: 平成1(あ)1070 / 裁判年月日: 平成2年5月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則にいう「治安ヲ妨ケ」るという概念は憲法31条に違反するほど不明確ではなく、また同罰則は思想や信条を処罰の対象とするものではないため憲法19条、21条、14条等にも反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、爆発物取締罰則違反の罪に問われ、同罰則の合憲性を争って上告した。主な主張は、同罰…