爆発物取締罰則の規定違憲の主張が欠前提とされた事例
爆発物取締罰則1条,爆発物取締罰則3条,憲法31条,憲法14条1項,憲法19条,憲法21条,憲法36条
判旨
爆発物取締罰則にいう「治安ヲ妨ケ」るという概念は憲法31条に違反するほど不明確ではなく、また同罰則は思想や信条を処罰の対象とするものではないため憲法19条、21条、14条等にも反しない。
問題の所在(論点)
爆発物取締罰則に規定される「治安ヲ妨ケ」という概念が罪刑法定主義(憲法31条)の要請する明確性の原則に反しないか、また、同罰則の規定が特定の思想や信条を処罰の対象とする差別的なものとして憲法19条、21条、14条等に違反しないかが問題となった。
規範
刑罰法規の明確性(憲法31条)に関しては、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめる基準が読み取れるか否かによって判断される。また、法が特定の行為を処罰対象とするものであり、思想や信条自体を対象とせず、属性による差別も設けていない場合は、精神的自由(憲法19条・21条)や法の下の平等(憲法14条)に反しない。
重要事実
被告人らは、爆発物取締罰則違反の罪に問われ、同罰則の合憲性を争って上告した。主な主張は、同罰則1条の「治安ヲ妨ケ」るという要件が不明確で憲法31条に反すること、3条等の規定が思想や信条を理由とした差別的な重罰を課すものであり、憲法14条、19条、21条等に違反するという点であった。
あてはめ
最高裁は、爆発物取締罰則1条の「治安ヲ妨ケ」という概念について、過去の判例を踏まえ、不明確であるとはいえないとした。また、同罰則3条等の各条項は、あくまで「爆発物を使用して治安を妨げる」といった一定の行為をした者を処罰するものであって、思想、信条自体を処罰の対象とする趣旨ではないと判断した。さらに、人種や信条等によって差別的な取り扱いをしている事実も認められないため、平等原則違反の前提も欠くと判示した。
結論
爆発物取締罰則は、憲法14条、19条、21条、31条、36条のいずれにも違反しない。したがって、原判決の維持を妨げるような憲法違反の主張は認められず、上告を棄却する。
実務上の射程
明治初期に制定された爆発物取締罰則の合憲性を再確認した判例である。特に「治安ヲ妨ケ」という抽象的文言の明確性判断において、裁判所が限定解釈や文脈的判断を通じて合憲性を維持する姿勢を示す際の先例として有用である。
事件番号: 平成8(あ)830 / 裁判年月日: 平成9年8月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則は現在も法律としての効力を有し、「治安ヲ妨ケ」るという構成要件も明確性の原則に反せず、かつ定められた刑罰が残虐な刑罰に当たったり思想差別を目的としたりするものではない。 第1 事案の概要:被告人らは、爆発物取締罰則違反等の罪で起訴された。これに対し、被告人側は、同罰則が明治17年太政…
事件番号: 昭和53(あ)800 / 裁判年月日: 昭和53年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則は憲法施行後も法律としての効力を有し、その1条が定める構成要件は明確であり、法定刑の重さも立法政策の範囲内で憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人両名は、爆発物取締罰則違反等の罪で起訴された。弁護人は、同罰則が明治17年の太政官布告であり憲法上の「法律」にあたらないこと、1条の…